コールセンターはAI導入で劇的に変わる?解決できる課題・活用事例を紹介
コールセンターは、企業と顧客の接点となる窓口です。近年では、顧客の多様化やチャットボットの普及しており、コールセンターを取り巻く環境は今後も進化し続けるでしょう。
こうした状況下で、コールセンターの業務効率化や顧客満足度の向上を図るために、AIの導入が注目されています。
本記事では、コールセンターAI導入で解決できる課題や活用事例を紹介します。コールセンターAIの導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
コールセンターがAI導入で解決できる課題
コールセンターにAIを導入することで、以下の課題を解決できる可能性があります。
- 新人教育に時間がかかること
- 高い離職率・人手不足
- コストの不足
- 応対品質のバラつき
- SNS上での悪評拡散
新人教育に時間がかかること
コールセンターにAIを取り入れることで、新人教育にかかる時間を短縮できます。
人手不足が続くコールセンターの場合、求人と新人教育を継続的に行わなければなりません。
教育を実施している期間は、教育者は通常業務を行えず、現場が常に多忙になる可能性があります。
さらに、教育用のマニュアルやテンプレート、トークスクリプトの作成は、人が一から作成しようとすると膨大な時間がかかるでしょう。
AIによっては、テキストの自動生成機能が搭載されているものがあり、マニュアルやスクリプトの作成が効率化します。教育資料の作成時間の短縮につながるでしょう。
高い離職率・人手不足
AIは、離職率や人手不足の解消にも効果的です。
コールセンターは離職率が高く、人手不足が発生しやすい業界として知られています。
その理由として、業務量の多さと一人あたりにかかる負担が大きいこととが考えられるでしょう。
AIを導入することで、オペレーター業務の自動化・効率化が実現できます。
たとえば、チャットボットの自動応答で顧客の悩みが瞬時に解決できれば、オペレーターが対応する必要はありません。
AI導入は、人手不足の解消につながり、オペレーターの定着率向上につながるでしょう。
コストの不足
コスト不足の解消も期待できます。
コールセンターの性質上、オペレーターにかかる人件費は避けられません。
定着率の低さという理由から、新人を育てるための教育コストがかかりすぎるという問題もあるでしょう。
また、自動応答機能やFAQツールにより、少人数のオペレーターでも業務を遂行できる場合があります。
そこで、これまで新人採用や人件費にかかっていたコストも削減できるでしょう。
応対品質のバラつき
コールセンターにAIを導入することで、応対品質のバラつきを抑える効果が期待できます。
AIは、膨大なデータに基づいて学習するため、スキルや経験に依存することなく一定の品質を維持できます。
ただし、AIを導入したからといって、オペレーターの存在意義そのものがなくなるわけではありません。
AIとオペレーターを組み合わせることで、応対品質のばらつきを解消し、さらなる顧客満足度の向上を図れるようになります。
SNS上での悪評拡散
SNS上での悪評拡散を防止できる効果もあります。
SNSが発達した現代では、消費者の声は大きな影響力を持ちます。
オペレーターの対応次第では、ネガティブな口コミや悪評を拡散されてしまうというケースもあるでしょう。
悪評が拡散されてしまうと、企業イメージが低下しやすくなり、売上にも影響しかねません。
コールセンターで導入できるAIには、オペレーターの対応を分析し、改善点をフィードバックする機能があります。これにより、オペレーターの対応力を向上させ、顧客満足度の向上を目指せるでしょう。
顧客満足度が高まれば、結果的にネガティブな評価の拡散回避につながります。
コールセンターで導入できるAIは7種類
コールセンターで導入できる代表的なAIは、以下の7種類です。
- チャットボット
- AI自動音声応答
- 音声認識システム
- 声紋認識システム
- AI検索システム
- FAQシステム
- テキストマイニング・VoC分析ツール
チャットボット
チャットボットとは、AIが顧客と対話形式で会話できるシステムのこと。顧客が入力した文章からキーワードを読み取り、適切な答えを自動返答します。
コールセンターにおいて、チャットボットは以下のシーンで活用できます。
- シナリオに沿った顧客対応
- 時間外の問い合わせ対応
- オペレーターサポート
チャットボットは、あらかじめ設定したシナリオに沿って瞬時に返答ができます。待ち時間なく自己解決を目指せるため、顧客満足度の向上が期待できるでしょう。
AI自動音声応答
AI自動音声応答とは、顧客からの問い合わせの一次受付や担当者への振り分けを自動で行うシステムのこと。IVR(電話自動応答システム)とも呼ばれます。
AI自動音声応答を活用すれば、担当外の電話を受けたり担当者へ取り次いだりする必要がありません。オペレーターが、自分の業務に集中しやすくなるというメリットもあるでしょう。
IVRの選び方やおすすめのシステムについては、こちらで紹介しています。あわせてご覧ください。
音声認識システム
音声認識システムとは、AIによる音声認識機能で通話記録をテキストに変換できるシステムのこと。蓄積されたデータは、通話内容の確認やトークスクリプトに活用でき、実務にかかる負担軽減を図れます。
音声認識システムは、クレーム対応にも役立ちます。口頭がメインのコールセンターでは「言った・言ってない」のすれ違いによるトラブルが生じやすいものです。
音声認識システムを活用することで、すべての通話記録を可視化できるので、こうしたトラブルの防止に有効でしょう。
声紋認証システム
声紋認証システムとは、声からユーザー固有の特徴を抽出し、本人を特定できるシステムのこと。顧客の本人確認を簡略化できるようになります。
コールセンターでは、顧客から電話を受けた際に本人確認を行うケースがあります。
従来の本人確認では、ID・パスワードの入力や本人確認書類の提示といった手間を要していました。
声紋認証システムを利用することで、顧客の声紋を読み取るだけで本人確認を行えるため、顧客の負担軽減につながるでしょう。
AI検索システム
AI検索システムとは、調べたい情報を瞬時に検索できるシステムのこと。顧客へ回答する時間を短縮でき、オペレーター業務の効率化が可能になります。
AI検索システムは、非常に高い精度を保有しています。検索時のワードに表記揺れや曖昧な表現を含んでいても、過去の検索履歴から適切な回答を抽出してくれるでしょう。
オペレーターの回答にバラつきが生じにくくなるため、応対品質の均一化に寄与します。
FAQシステム
FAQシステムとは、顧客の問い合わせに対してあらかじめ用意した回答を用いて自動応答するツールのこと。「よくある質問」と回答を蓄積して検索できるようにしておくことで、ユーザーの自己解決を促せます。
FAQシステムを利用すれば、オペレーターは「よくある質問」への回答に時間を使う必要がなくなります。その分、自動応答では回答できない複雑な問い合わせや顧客のニーズを汲み取った対応に集中できるようになるでしょう。
VoC分析ツール
VoC分析ツールも、コールセンターで活用できるAIです。
VoC分析ツールとは、商品やサービスの課題を改善するために顧客の声を分析するシステムのこと。顧客の声を収集・分析し、商品やサービスの改善につなげることで、顧客満足度の向上につなげられるでしょう。
顧客の声をマーケティングに活かせば、リピーター獲得や口コミの増加、顧客ロイヤリティの向上も期待できます。
VoC分析ツールのおすすめツールは、こちらの記事で紹介しています。
コールセンターがAI導入で得られる3つのメリット
コールセンターがAI導入で得られる3つのメリットは、以下のとおりです。
- オペレーターの負担軽減につながる
- 業務の属人化を防げる
- 応対品質の担保で顧客満足度の向上が期待できる
オペレーターの負担軽減につながる
AIを活用することで、オペレーターの負担軽減につながります。
たとえば、IVRやチャットボットなどのAIを活用することで、顧客からの問い合わせに対して自動応答が可能です。通話記録の自動生成を活用すれば、通話内容のチェックが容易になるため、大幅な業務の効率化が図れるでしょう。
業務の効率化は、オペレーターの工数削減につながるため、離職回避にも有効といえます。
業務の属人化を防げる
コールセンターAIは、業務の属人化防止に効果的です。
コールセンターが抱える課題のひとつに、オペレーター同士のナレッジ共有が追いつかず属人化しやすいという課題が挙げられます。
FAQシステムや検索システムを導入することで、対応内容や話し方をデータとして蓄積・共有できるため、属人化防止に役立つでしょう。
応対品質の担保で顧客満足度の向上が期待できる
コールセンターAIは、応対品質の担保につながる可能性があります。
たとえば、AIを活用することで以下のことが可能になります。
- 顧客の問い合わせ内容を正確に把握
- 顧客ニーズを理解した対応
- オペレーターの対応を標準化
AIを導入することで、顧客は24時間365日必要な情報を入手できます。
ただし、AIはあくまでもツールであり、オペレーターのスキルや経験が応対品質を左右する要素であることは変わりません。
AIは、オペレーター業務をサポートするという位置付けとして理解しておきましょう。
コールセンターのAI導入手順は5ステップ
コールセンターのAI導入手順として、以下の5ステップを紹介します。
- 現状の課題を分析・把握する
- 改善すべき業務を可視化する
- 課題解決に向けた計画を立案する
- システムを比較検討する
- 実際にシステムを導入する
現状を分析・把握する
まず、コールセンターの現状を明確にしてください。
AIを導入することで、どのような課題を解決し、どのような目的を達成したいのかを検討します。
現状を把握した後、AIを導入した際のメリットやデメリットを予測しておくといいでしょう。
改善すべき業務を可視化する
続いて、改善すべき業務を可視化します。
課題が把握できていないと、どのようなシステムを導入すればいいのか検討できません。
課題をしっかりと可視化することで、今後の施策を立案しやすくなります。
課題解決に向けた計画を立案する
課題を可視化した後、解決に向けた計画を立てましょう。
計画が曖昧なままだと、スムーズな解決が図れません。
コールセンター業務は、大きく「顧客対応」「実務作業」「マネジメント」の3つに分類できます。
解決すべき課題がどの項目に該当するのかを明確にしてから、計画を立案してください。
システムを比較検討する
続いて、システムの比較検討をします。
システムを検討する際は、自社の課題に合ったAIシステムを選定しましょう。
AIシステムには、IVR、チャットボット、音声認識システム、ナレッジベースなどさまざまな種類があります。自社のニーズに合ったAIシステムやサービスを選定してみてください。
また、本稼働の前に、試験運用を実施することも重要です。
システムを導入しただけでは、オペレーターが使いこなすことができません。運用前に、オペレーターへの教育・研修を行い、基本的な操作方法や業務の進め方を身につける必要があります。
施策運用をしっかりと行うことで、システムを効果的に活用し成果の向上が期待できるでしょう。
実際にシステムを導入する
試験運用の結果を踏まえて、本格的に導入・稼働させてください。
本稼働では、AIシステムやサービスを実際に運用して効果を検証していきます。必要に応じて、運用方法を調整してもいいでしょう。
コールセンターのAI導入は、一朝一夕で成果につなげることはできません。運用時のマニュアル作成も含めて、計画的に進めるようにしてください。
コールセンターでAIを導入する際の注意点
コールセンターでAIを導入する際は、以下2つのことに注意してください。
- 導入・運用にコストがかかる
- 予期せぬトラブルが発生する可能性がある
導入・運用にコストがかかる
コールセンターにAIを導入する際は、コストがかかることを理解しておきましょう。
無料プランが選べるシステムもありますが、使える機能に制限があるためおすすめできません。
AIシステムにかかるコストは、サービスの種類や商品、自社の課題によって異なります。
コールセンターAIを導入する際には、導入コストや運用コストをしっかりと見積もったうえで導入を検討してください。
予期せぬトラブルが発生する可能性がある
業務効率化が可能になるAIですが、必ずしも完璧ではありません。トラブルが発生したときの対応フローを検討しておく必要があります。
同時に、責任の所在を決める基準を設けておきましょう。
たとえば、顧客の要望に対してAIが的確な回答を提示しなかった場合は、システム提供元かコールセンターのデータのどちらかに問題があります。
責任の所在を明確にしておかないと、改善が図れません。
トラブルを拡大させないためにも、システム導入時に判断基準を設定しておいてください。
コールセンターのAI導入事例3選
コールセンターのAI導入事例を3選紹介します。
- アフラック生命保険株式会社
- 東京ガス株式会社
- 株式会社レオパレス21
アフラック生命保険株式会社
アフラック生命保険株式会社は、カスタマーセンターで声紋認証を導入しました。
声紋認証によって、ユーザーの氏名や生年月日、住所、証券番号の特定が可能になり、本人確認に要する時間短縮を実現しています。
声紋認証の登録方法は2種類あり、スマートフォンから自身で声を登録できるものと、電話で登録する方法があります。
一度登録すれば、次回以降は自動で認証されるため、ユーザーはストレスなく問い合わせを行えるようになりました。
東京ガス株式会社
東京ガス株式会社のカスタマーサポートでは、ガス・電気・サービスに関する問い合わせに対して、複数チャネルで自動受付できる体制を整えています。
顧客からの問い合わせ内容に応じてAIが瞬時に推奨回答を特定し、オペレーターに提示されるため、業務負荷軽減のサポートに貢献しています。
AI導入により、年間1万1,000時間の応対時間削減と顧客満足度の向上が実現しました。
株式会社レオパレス21
株式会社レオパレス21は、コンタクトセンターにおける顧客接点の強化として、AIチャットボットとFAQシステムを導入しています。
同社コンタクトセンターでは、繁忙期である3月に問い合わせが集中する傾向があり、迅速な回答が困難な状況にありました。
AIを導入することで、全国で契約している個人・法人の顧客からの問い合わせに対してスピーディーな対応を実現できるようになりました。
顧客の自己解決が図れるようになったため、顧客満足度の向上につながっています。
コールセンターAI導入に関するよくある質問
コールセンターAI導入に関するよくある質問を紹介します。
コールセンターのAI導入でオペレーターは不要になりますか?
コールセンターAI導入によって、オペレーターの業務が一部自動化される可能性はありますが、オペレーターが不要になることはありません。
AIは、定型的な問い合わせや顧客ニーズを予測できる問い合わせに対しては、一定の効果を発揮することができます。
しかし、顧客のニーズが複雑で臨機応変な対応が求められる問い合わせは、AIでは対応が難しい場合があるでしょう。
コールセンターAIの導入により、生産性が向上する可能性がありますが、オペレーターが不要になることはないといえます。
コールセンターでAIを導入すればクレーム対応もできますか?
クレーム対応の一部を自動化することは可能です。
たとえば、クレーム受付や担当者への振り分け、クレーム内容の分析等を簡易化できます。
しかしAIは、顧客の感情への正確な理解が難しいため、適切な対応を行うことが難しい場合も少なくありません。そのため、オペレーターが顧客の感情に配慮した対応や複雑なクレームの解決など、AIでは対応が難しい業務を担う必要があります。
まとめ:コールセンターにAIを導入してサービスの品質向上を目指そう
コールセンターで利用されるAI技術は、常に進化しています。AIの技術が進歩すれば、対応できる業務範囲が拡大していく可能性も大いにあるでしょう。
とはいえ、オペレーターが不要になるかといえば、そうではありません。AIはあくまでもツールであり、オペレーターの応対品質は非常に重要です。
オペレーターの業務負荷軽減のためにも、AIをうまく活用して自社の品質向上を目指しましょう。