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平均応答時間(ASA)とは?コールセンターでの待ち時間や短縮方法を解説

平均応答時間(ASA)は、コールセンターにおける重要な指標のひとつです。というのも、待ち時間が増えれば、顧客満足度の低下につながりかねないからです。

とはいえ、オペレーターでは対処しきれない複雑な内容の場合は、平均応答時間が長くなることも少なくありません。

そこで本記事では、コールセンターにおける平均応答時間の重要性や、待ち時間を短縮する方法について解説します。待ち時間が長くなる要因改善する際の注意点も紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

平均応答時間(ASA)とは、入電からオペレーターが対応するまでの時間

平均応答時間(Average Speed of Answer)とは、入電からオペレーターが顧客に対応するまでにかかる時間のことです。

近年コールセンター業界では、業務量の多さやクレーム対応など、オペレーターの業務負担が大きくなるため、離職率が高く慢性的な人手不足の課題を抱えています。そのため、オペレーター不足により、全ての入電に対応しきれない「あふれ呼」が増えているのが現状です。

平均応答時間が長いと、顧客は待たされることに不満を覚えるため、顧客満足度の低下につながる恐れがあります。

顧客満足度の低下を防止するには、平均応答時間を短縮するための取り組みが欠かせません

平均応答時間(ASA)とSL(サービスレベル)との違い

平均応答時間(ASA)と、SL(サービスレベル)の違いは、時間設定の有無です。平均応答時間は、状況によって時間が異なります。

一方、SL(サービスレベル)は、設定した時間内でどれだけ対応できたのかを表す指標です。

  • 平均応答時間(ASA):時間が短いほど質が高い
  • SL(サービスレベル):対応数が多いほど質が高い

いずれも、「電話のつながりやすさ」に向けた指標であり、コールセンターには欠かせない要素となります。

コールセンターにおける応答時間・待ち時間の平均

コールセンター白書2021によると、コールセンターでの応答時間や待ち時間の平均は「21.5秒」とされています。

参照:コールセンター白書2021

  • 5秒以下:21%
  • 6~10秒:29%
  • 11~20秒:18%
  • 21秒以上:32%

これは76社を対象に調査した平均なので、コールセンターの状況によって応答時間は変わります。

最も多いのは「6~10秒」ですが、オペレーター不足の場合は、平均応答時間を超えることもあるでしょう。

顧客満足度の低下を防ぐには、平均応答時間である21.5秒が目安となります。

平均応答時間(ASA)の求め方

平均応答時間(ASA)は、以下の計算式で算出できます。

「入電からオペレーターが対応するまでの時間の合計÷総入電数」

例えば、5件の入電がありそれぞれの応答時間が、18秒・10秒・5秒・30秒・20秒だったとします。

これを計算式に当てはめると、平均応答時間は16.6秒です。

ただし、コールセンターには日々数え切れないほどの入電があるため、手作業ではなくシステムを利用して算出します。

平均応答時間(ASA)が長くなる5つの原因

平均応答時間(ASA)が長くなるのは、以下の5つが要因と考えられます。

  1. 入電数に対する慢性的なオペレーター不足
  2. オペレーターの対応スキルが低い
  3. 平均処理時間(AHT)が長い
  4. ワークフローを最適化していない
  5. システムトラブルの影響

それぞれに詳しく解説します。

入電数に対する慢性的なオペレーター不足

まず、入電数に対してオペレーターが足りていないことがあげられます。

これは、コールセンター業界全体に見られる、慢性的な人手不足が原因です。

オペレーターが足りないコールセンターでも、閑散期や入電数が少ない時間帯なら限られた人数でも対応できるでしょう。

しかし、繁忙期や入電が集中しやすい時間帯は、オペレーター数が足りていなければ平均応答時間が長くなります

オペレーターの対応スキルが低い

次に、オペレーターの対応スキルが低いことも要因です。

経験が豊富なベテランオペレーターなら、複雑な内容の問い合わせにも迅速に対応できるでしょう。

新人オペレーターは経験が乏しいので、自身では対応できない内容の場合は、調べたり上司に指示を仰いだりするため応対時間が長くなります

1件の電話に対応する時間が長くなれば、他の入電に対応できません。その結果平均応答時間が長くなります。

平均処理時間(AHT)が長い

平均処理時間(AHT)※1が長くなるのも、平均応答時間を長引かせる要因です。

平均処理時間とは、1件あたりの通話から後処理までにかかる平均時間を表します。

平均処理時間もコールセンターにおける指標のひとつで、以下の計算式で算出します。

「平均通話時間(ATT)※2+平均後処理時間(ACW)」

オペレーター業務は、電話に対応する以外にも、受発注や顧客情報の入力などの後処理も含まれます。

通話時間は短くても後処理に時間がかかれば、その間は入電があっても対応できません。問い合わせ内容が複雑になるほど、平均処理時間が長くなるのが留意点です。

※1 AHT(Average Handling Time)
※2 ATT(Average Talk Time)
※3 ACW(After Call Work)

ワークフローを最適化していない

ワークフローを最適化していないのも要因です。

ワークフローは、業務に関する一連の流れを図式化するので、新人オペレーターでもひと目で確認できます。

ただし、紙媒体のワークフローは、手間がかかるためさまざまな問題が生じる恐れがあります。

ワークフローを最適化するには、システムを導入して自動化することも重要です。

システムトラブルの影響

システムトラブルの影響も、平均通話時間を長くする要因です。

システムを導入しても、通信速度が遅かったり、頻繁に切断したりすれば業務に支障が出ます。

通信が切断された状態では、入電に対応できません

システムを導入する際は、通信速度や安定性を確認してください。万一トラブルが生じた場合は、迅速に対応できるようなサポート体制が整っているかも確認しましょう。

平均応答時間(ASA)の改善方法4つ

では次に、平均応答時間(ASA)を改善する4つの方法を紹介します。

  1. オペレーターの増員と人員配置を整える
  2. マニュアルやよくある質問を整備する
  3. オペレーターの教育でスキルアップを図る
  4. システムを導入する

オペレーターの増員と人員配置を整える

人手不足の課題には、オペレーターの増員と人員配置を整えましょう。

すでにオペレーターの数が足りていない場合、そのままではオペレーターへの業務負担が増えて離職率を高めかねません。

今以上にオペレーターが不足すれば、平均通話時間の改善以前に、コールセンターの存続も危ぶまれる恐れがあります。

また、閑散期は対応できても繁忙期の対応が困難なら、繁忙期のみアウトソーシングを検討するといいでしょう。

マニュアルやよくある質問を整備する

マニュアルやよくある質問を整備するのも有効です。

マニュアルがあれば、新人オペレーターが対応に困ったとき、マニュアルを見て対処できる場合があります。

よくある質問は、自社サイトにコンテンツとして設置します。

コールセンターに寄せられる質問で、件数が多いものをピックアップしてQ&A形式で紹介する手法です。

顧客が知りたい情報を検索できるので、電話をかけずに自己解決できる可能性があります。

入電数が減るだけでなく、電話をかけずに解決できれば、顧客満足度の向上につながるでしょう。

オペレーターの教育でスキルアップを図る

オペレーター教育を徹底して、個々のスキルアップを図るのも有効です。

コールセンターにはさまざまなオペレーターがいるため、応対品質に差が生じるのは仕方ありません。

しかし、平均通話時間の短縮を実現するには、オペレーターの応対品質を均一化する必要があります

オペレーター教育を徹底して個々のスキルが上がれば、平均通話時間の短縮につながるでしょう。

システムを導入する

システムの導入を検討してください。

コールセンターは、業務量が多く煩雑化しやすい傾向があるため、有人対応や手作業では全てに対応するのは容易ではありません。

そこで、システムを導入して自動化すれば、業務効率がアップします。コールセンターに役立つシステムは次の通りです。

  • IVR(音声自動応答)
  • ACD(着信自動振り分け)
  • チャットボット
  • 問い合わせフォーム
  • SMS

システムの導入で業務負担を軽減できれば、オペレーターは電話対応業務に集中できます。その結果として、平均通話時間も短縮されるでしょう。

平均応答時間(ASA)を改善する際の注意点

では最後に、平均応答時間(ASA)を改善するに当たって、おさえておきたいポイントを2つ紹介します。

  1. 無理なノルマを設定しない
  2. ただ早ければ良いわけではない

無理なノルマを設定しない

無理なノルマを設定しないようにしてください。

平均応答時間の短縮は、顧客満足度向上につながりますが、無理なノルマを設定すればオペレーターへの負担が増えます。

ノルマを達成できても、オペレーターの応答品質が低下すれば意味がありません。厳しいノルマに耐えられず、離職率を上げる恐れもあります。

ノルマを設定する場合は、オペレーターの負担が大きくならない範囲にとどめましょう

ただ早ければ良いわけではない

平均通話時間は、ただ早ければ良いわけではありません。

通話時間の短縮だけを重視すると、顧客への対応が雑になる恐れがあります。

そもそも、顧客がコールセンターに電話をかけるのは、抱える疑問や不安を解決するためです。

対応を急ぐあまり、疑問や不安を解消できないまま通話を終えれば、顧客満足度の低下につながる恐れがあります。

平均通話時間を短縮することも大切ですが、対応がおろそかにならないように、顧客に寄り添うことも心がけてください

まとめ:平均応答時間を短縮して顧客満足度の向上を図ろう

平均応答時間(ASA)は、顧客満足度に直結するコールセンターの重要な指標です。

長くなる要因はいくつかありますが、原因に合わせて適切に対処すれば平均応答時間を短縮できます

ただし、オペレーターへの負担が大きくならないことや、対応が雑にならないように注意しなければなりません。

本記事で紹介した情報を参考にしながら、平均応答時間を短縮して顧客満足度の向上を図ってください。

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