営業部門の働き方改革!難しい理由と成功の秘訣・事例を紹介
働き方改革は、労働者それぞれに見合った働き方を実現させるために導入されました。
2019年に施行されて以来、多くの企業でも働き方改革に取り組んでいます。
その一方、営業部門では働き方改革が浸透しづらい傾向があります。
「働き方改革が導入されても、営業部門は労働環境が変わらない……」
「営業部門で働き方改革を成功させる方法を知りたい!」
このように思う営業担当者や管理者は少なくないでしょう。
そこで本記事では、営業部門での働き方改革が難しいとされる理由について解説します。成功のポイントや成功事例も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
働き方改革とは ?
働き方改革とは、「労働者のライフスタイルに合わせて、多様かつ柔軟な働き方を選択できるようにする取り組み」のこと。厚生労働省により2019年4月から施行されました。
全国47都道府県に設置された「働き方改革推進支援センター」では、無料相談を受け付けています。
全ての事業主を対象としており、社会保険労務士が個別でアドバイスするサービスです。窓口・電話・メールの他、訪問サービスにも対応しています。
働き方改革関連法案の基礎知識
働き方改革の基礎知識を以下にまとめました。
働き方改革関連法 | 概要 |
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年次有給休暇の時季指定 大企業・中小企業とも2019年4月~ | 法定年次有給休暇付与日数が10日以上である全ての労働者には、毎年必ず5日の年次有給休暇を取得させる |
時間外労働の上限規制 大企業:2019年4月~ 中小企業:2020年4月~ | 原則残業の上限を月45時間・年360時間とし、臨時的な特別の事情がない限り超えることはできない ・年720時間以内 ・複数月平均80時間以内(休日労働を含む) ・月100時間未満(休日労働を含む) |
同一労働同一賃金 2020年4月~ 中小企業におけるパートタイム・有期雇用労働法適用は2021年4月1日~ | 正社員と非正規雇用労働者の不合理な差別待遇を禁止する |
これまで、労働者が有給休暇を取る場合は、会社に取得したい時期を申し出るのが一般的でした。年次有給休暇の時季指定の導入後は、会社が同労者の意見を尊重しつつ取得時期を指定するようになっています。
時間外労働の上限規制では、規定以上の残業が禁止されました。違反した場合は、6ヶ月以下の懲役または、30万円以下の罰金が科せられる恐れがあります。
同一労働同一賃金では、待遇差がある場合に、労働者が会社に対して説明を求める権利が認められています。会社は労働者から求められたとき、説明しなければなりません。
営業部門で働き方改革が求められるワケ
営業職は、社外での顧客対応の他、資料作成や報告書の作成など社内業務まで、営業担当者が対応するのが一般的です。
業務が煩雑化しやすいうえ、全ての業務を営業時間内に対応するのが難しい以上、時間外労働を余儀なくされます。こうした事情から、営業担当者の業務負担は大きくなる一方です。
すべてを担当者1人でこなそうとすると、機会損失のリスクが高まる恐れがあります。
とはいえ、営業担当者の業務負担軽減を重視すれば、営業力の低下につながりかねません。
こうした状況を改善するためには、営業の質を落とさずに担当者の業務負担を軽減することが求められます。
そこで、営業部門にも働き方改革が求められるようになりました。
営業部門で働き方改革が難しいとされる3つの理由
営業部門での働き方改革が必要とされる一方、導入が難しいとの懸念点もあります。
なぜ営業部で働き方改革が難しいといわれているのか、本章ではその理由を詳しく解説します。
- 顧客対応が発生するから
- 業務が煩雑化しやすいから
- 属人化しやすいから
顧客対応が発生するから
まず挙げられるのが、顧客対応の必要性です。
取引先との商談や打ち合わせでは、顧客の都合が優先されます。急な予定変更や移動時間などで予定がずれ込むことも少なくありません。
顧客対応の後は社内業務も残っているため、帰社時間が遅くなれば残業を余儀なくされます。
業務が煩雑化しやすいから
営業職は、業務が煩雑化しやすいのも理由です。
- 顧客とのアポ
- 取引先への移動と商談・打ち合わせ
- 会議や定例報告会
- 資料作成
- 請求書作成
- 報告書作成
- 社内での情報共有など
全ての業務を営業担当者が1人で対応すれば、営業時間内に処理するのが困難な場合もあるでしょう。
プロジェクトの期日が決まっている以上、スケジュール変更により間に合わない場合は、時間外労働や休日出勤で補わなければなりません。
属人化しやすいから
営業の属人化とは、営業担当者に依存した状態を指します。
営業部門では、成果につなげて評価されるために自分の立場を守ろうとする意識が働く傾向があります。
同じチーム内であってもライバルである以上、個々のスキルやノウハウを共有するメリットが感じられません。
属人化によりノウハウや情報が共有されなければ、社内ノウハウも蓄積されず人材教育にも影響を与える恐れがあります。
営業部門で働き方改革を成功する5つの方法
営業部門は、働き方改革が浸透しづらい一面があります。
とはいえ、以降で紹介する5つの方法を実践すれば成功につなげやすくなります。
- 業務の全体像を可視化する
- 業務の配分を最適化する
- 業務の削減と効率化を進める
- 情報共有しやすい体制を整える
- テレワークを導入する
成功させるポイントをそれぞれ詳しく見ていきましょう。
業務の全体像を可視化する
まず、業務の全体像を可視化しましょう。
営業の属人化により、管理者や他の担当者が業務の全体像を把握しづらい状況です。
たとえば、顧客から緊急の問い合わせがあっても、担当者の不在時には他の者では対応できません。
担当者に連絡を取ったりフォローしたりすれば、他の担当者の業務に支障が出る恐れがあります。
業務の全体像を可視化するには、以下の施策が有効です。
- 全員にヒアリングやアンケート調査を行う
- 結果から課題を引き出し解決策を立案する
- 専用システムでデータを見える化する
このようにさまざまな情報を、部署内で共有すれば業務の全体像を可視化できます。
業務の配分を最適化する
業務配分の最適化も重要です。
営業担当者は、社外業務から社内業務まで多くの業務を1人で担当しなければなりません。
過剰な負担が続けば、担当者の精神的ダメージが大きくなったり、モチベーションの低下で離職率を高めたりする恐れがあります。
そこで、業務の配分を最適化すれば、営業担当者の負担を軽減できるでしょう。
たとえば、帰社後の資料整理や作成など、事務スタッフに割り振れば、営業担当者の業務負担が軽減されます。
営業担当者は社外業務に注力できるので、営業力の向上につながるのも利点です。
業務の削減と効率化を進める
業務削減と効率化を進めるのも有効です。
- 会議で紙資料をやめツールで共有する
- オンライン会議にする
- 直行直帰を検討する
午前中に会議があると、営業担当者は一旦出社してから取引先に移動しなければなりません。
オンライン会議なら、出先付近にある会議室などで出席できます。さらに、紙資料を廃止しツールで共有すれば、時間とコストの削減が可能です。
朝一旦出社してから取引先に向かい、外回りが終わった後の帰社を義務化していると、営業担当者の時間をロスします。
そこで、直行直帰を認めれば、移動にかかる時間を有効活用できます。体力的な負担も軽減されるでしょう。
情報共有しやすい体制を整える
そして、情報共有しやすい体制を整備するのも大切なポイントです。
属人化により担当者に依存していると、担当者不在時には他のスタッフに負担がかかります。
急を要する案件では、代わりに対応する他の担当者の業務に支障が出ることもあるでしょう。その結果プロジェクトの遂行を妨げる恐れがあります。
営業部門に情報共有の体制が整備されていれば、こうした事態を防げる他、生産性の向上にもつながります。
テレワークを導入する
テレワークも有効な手段です。
近年インターネットの普及や、新型コロナウイルス感染予防対策として、オンライン営業を導入する企業が増えています。
テレワークではオンライン営業も可能ですし、通勤や移動にかかる時間を節約できれば生産性の向上にもつながります。
営業部門での働き方改革実現に役立つツール・サービス
ツールを使えば、営業部門全体の進捗状況を可視化できます。情報共有がしやすく生産性の向上や属人化を防ぐ効果が期待できるのも利点です。
以下に営業部門の働き方改革実現に役立つツールやサービスを5つ紹介しますので、参考にしてみてください。
- オンライン営業ツール
- SFA(営業管理ツール)
- タスク管理ツール
- 営業実績共有システム
- アウトバウンド支援サービス
オンライン営業ツール
オンライン営業ツールは、インターネットにつながる環境を確保できればどこでも営業活動ができます。
Zoom・Skype・Google Meetなら、無料から導入可能です。必要に応じて有料版にアップデートもできます。
あると便利な機能 | |
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BtoB企業 | チャット 資料共有 名刺交換 トークスクリプト表示 |
BtoC企業 | 顧客管理 担当者自動振り分け ワンクリック接続 |
対象とする顧客によって、必要な機能が変わります。ツールを選ぶ際は、機能にも注目しましょう。
SFA(営業管理ツール)
SFA(Sales Force Automation)は、営業管理システムのことです。
- 顧客情報の管理
- 営業活動履歴・分析
- 予算・実績の管理と可視化
- 受注予約管理(見込み案件)
上記は一例ですが、営業活動をサポートするので業務効率化につながります。
タスク管理ツール
タスク管理ツールは、営業活動で「すべきこと」と「優先すべきこと」を把握できるツールのこと。主な機能は以下の通りです。
- ToDoリスト作成
- スケジュール管理
- 案件ごとの管理
- 担当者の割当
- メモやファイル共有
- ガントチャート
- 通知機能
1日のスケジュールを可視化できるだけでなく、チームで共有・管理もできます。
営業実績共有システム
営業実績共有システムを利用すれば、各担当者の進捗状況が一目瞭然です。
先ほど紹介したSFAツールも選択肢ですが、セールスパフォマーならチーム全体のモチベーションアップにつながる効果も期待できます。
運営会社 | 株式会社セブンティーン |
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料金(税込) | 月額利用料:2,750円/1ライセンス 閲覧ライセンス:0円 初期費用:別途必要(要問い合わせ) |
主な機能 | リアルタイムでグラフ化 オフィスサイネージ 速報メール自動配信 ポジティブワード自動配信 トレンド分析・着地予測など |
公式サイト | https://topsales.jp/ |
営業部門全体の成績をワンビューでスクロール表示できるので、全社意識も生まれやすいでしょう。
アウトバウンド支援サービス
テレアポ業務では、話を聞かずに電話を切られたり、厳しい言葉を投げかけられたりといったケースも少なくありません。
ノルマが設定されている場合は、プレッシャーも加わります。多くの業務をこなしながら電話をかけるのは、精神的苦痛も伴うでしょう。
こうした状況が続く中で、モチベーションを維持するのは容易ではありません。
そこで、アウトバウンド支援サービスを利用すれば、担当者の業務負担や精神的苦痛を軽減できます。
株式会社ディグロスでは、成果報酬型テレアポ代行サービスを提供しています。
1,000社以上の実績から培ったノウハウを元に、お客様のご要望に合わせた対応も可能です。
アポイント獲得を成果としているので、成果に至らなければ料金は発生しません。
こちらからお気軽にご相談ください。
営業部門で働き方改革を成功させた事例5選
では最後に、営業部門での働き方改革成功例を5つ紹介します。
- 多様な働き方への対応で離職率を7分の1に削減
- 上司とのコミュニケーションを強化し残業時間を55%削減
- 昼休憩をなくして労働時間を6時間に削減
- アプリを活用してドライバーの待ち時間を55%削減
- 独自技術を導入して大幅な業務負担軽減を実現
多様な働き方への対応で離職率を7分の1に削減
サイボウズ株式会社では、2005年に離職率が28%を超えた課題を抱えていました。
この数字は過去最高であり、離職率を下げるために以下の改革を実践しています。
- テレワークの導入
- 育児休暇制度の導入
- 育児や介護など家庭の事情に合わせた「選択型人事制度」の導入
- 子連れ出勤制度の導入
このように、ライフスタイルに合わせて柔軟に対応できるように改革したことで、離職率が最高時の7分の1となる3%前後まで低下。他にも、採用や人材教育のコスト削減も実現しています。
上司とのコミュニケーションを強化し残業時間を55%削減
株式会社えがおでは、通販事業ならではの「長時間労働」「休みが取れない」といった課題を抱えていました。
社内調査の結果、上司とのコミュニケーション不足が原因であることが判明します。
そこで、コミュニケーションの強化や、業務の可視化を実践したところ残業時間の55%削減に成功しました。
業務の可視化により、属人化の解消と有給取得率アップにも成功しています。
昼休憩をなくして労働時間を6時間に削減
株式会社ZOZOでは、昼休憩をなくす「ろうじろう※」を実践して労働時間の削減に成功しています。
ろくじろうとは、9時~15時まで休憩なしで、6時間働けば退社していいという福利厚生制度です。
昼休憩がなくなっても、短期集中できるので生産性がアップしています。
6時間労働でも福利厚生制度としたことで、8時間分の給料が支払われることや、残業すれば残業代も支払われることも成功のポイントといえるでしょう。
※2019年10月のフレックス制度導入により現在は終了
アプリを活用してドライバーの待ち時間を55%削減
大塚倉庫株式会は、大塚製薬の商品を管理する企業です。
商品の配送にはドライバーが欠かせませんが、長時間労働を余儀なくされることでのドライバー不足を懸念していました。
そこで独自のスマホアプリを開発・導入して、ドライバーの待ち時間を55%まで削減に成功しています。
アプリには、スマホで納品手続きが完結する機能も搭載されており、70%のコスト削減も達成しています。
独自技術を導入して大幅な業務負担軽減を実現
株式会社かんぽ生命保険では、長時間労働や休日出勤など、古い体制が改善されていないため、一部の社員への業務負担が大きくなる課題を抱えていました。
対象となる社員の多くは若い世代だったこともあり、早急な働き方改革が求められていたのです。
そこで導入したのが、IBMと共同開発により誕生した、独自システム「Watson」です。
Watsonは、専門的な知識が求められる業務の代行と、学習能力により人材育成にも対応できる機能を搭載しています。
システムの導入により、業務効率アップと大幅な業務負担の軽減に成功しました。
まとめ:営業部門に働き方改革を取り入れて業務効率化を図ろう
働き方改革は、労働者がライフスタイルに合わせて働き方を選べる制度です。
特に営業部門は属人化や業務の煩雑化など、働き方改革への対応が困難とされています。企業の売上に直結する部門でも、課題が改善されないままでは生産性の低下につながりかねません。
しかし成功のポイントをおさえておけば、営業部門でも働き方改革の導入は可能です。
本記事で紹介した情報を参考にしながら、営業部門での働き方改革を実現させ業務効率化につなげてください。