ホールパート法とは? PREP法との違いやメリット・活用術を詳しく解説
口頭や文章で物事を説明する際、内容を整理しないまま進めると冗長になり、伝えたいことが伝わらない恐れがあります。
ビジネスシーンにおいては、顧客に話したいことが伝わらなければ、成約にはつながらないでしょう。
そこで役に立つのが、内容をシンプルにわかりやすく伝えられる「ホールパート法」です。
本記事では、ホールパート法について詳しく解説します。PREP法との違いやメリット、活用術も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
ホールパート法とは ?
ホールパート法とは、Whole(全体)・部分(Part)・Whole(全体)の順に話す文章構成を使ったコミュニケーション法のこと。冒頭で全体像を伝えてから、各項目の詳細を掘り下げ、最後にもう一度全体像を伝える手法です。
ホールパート法を用いれば、聞き手の理解度が高まるので説得力がアップします。
ホールパート法とPREP法・SDS法の違い
話をわかりやすく簡潔に伝える手法には、ホールパート法の他にも「PREP法」「SDS法」があります。ここでは、それぞれの違いを紹介します。
ホールパート法とPREP法の違い
ホールパート法とPREP法は、伝える情報量に違いがあります。
- P(POINT)結論
- R(Reason)理由
- E(Example)具体例
- P(POINT)結論
PREP法では、最初と最後に結論を述べるため、全体像を2回伝えるホールパート法と共通しています。
さらに、PREP法では次に理由を述べてから、具体例も説明するのでより多くの情報を伝えられるのが特徴です。
ただし、具体例が入るため説明にかかる時間が長くなる点は異なります。
限られた時間の中で簡潔に伝える場合は「ホールパート法」、時間に余裕がある場合は「PREP法」と使い分けるのが有効です。
ホールパート法とSDS法の違い
ホールパート法とSDS法は、伝える数に違いがあります。
- S(Summary)全体
- D(Details)要点
- S(Summary)全体
SDS法の構成は、ホールパート法に似ていますが、一つの要点に特化できるのが特徴です。
一方のホールパート法は、複数の要点を伝えられます。
要点の詳細に特化して伝えたい場合は「SDS法」、複数の要点を簡潔に伝えたい場合は「ホールパート法」が適しているでしょう。
ホールパート法を取り入れる4つのメリット
では次に、ホールパート法を取り入れるメリットを4つ紹介します。
- 聞き手の理解度が向上する
- 短時間で要点を伝えられる
- 話が脱線するリスクを防げる
- 伝えたいことを強調できる
聞き手の理解度が向上する
まず大きなメリットに、聞き手の理解度が向上する点が挙げられます。
冒頭でこれから伝える内容を明確にすれば、聞き手は大まかな内容をイメージできます。
はじめに大枠を把握している状態を作ることで、聞き手は各部分の説明をスムーズに理解できるでしょう。
最後にもう一度全体像を提示すると、復習効果により聞き手の理解度が向上します。
短時間で要点を伝えられる
そして、短時間で要点を伝えられるのもメリットです。
ビジネスシーンでは、限られた時間の中で簡潔に要点を伝えなければならないケースは少なくありません。
たとえば、顧客に説明するシーンで話が冗長になれば、相手の理解が追いつかずに不信感を与える恐れがあります。
そこで、ホールパート法を用いて簡潔にわかりやすく伝えられれば、顧客からの評価も高まるでしょう。
話が脱線するリスクを防げる
さらに、話が脱線するリスクを防げるのもメリットです。
複数の要点を伝える場合に、話し手が伝えるべき要点を整理できておらず、話が脱線すれば聞き手には肝心な要点が伝わらないでしょう。
ホールパート法を用いれば、話し手は必要な情報を整理しておけるので、伝えたいことをわかりやすく伝えられます。
伝えたいことを強調できる
ホールパート法は結論を2回話すので、伝えたいことを強調できるのもメリットです。
たとえば顧客との商談で、自社商材の特徴を売り込む際には、最初と最後に2度伝えることで相手の印象に残りやすくなります。
特に最後でもう一押しできれば、クロージングの質が向上し成約につながりやすくなるでしょう。
ホールパート法を活用できるシーン
続いて、ホールパート法を活用できるシーンを4つ紹介します。
- プレゼンテーション
- 社内会議・上司への報告
- スピーチ
- 自己紹介
プレゼンテーション
プレゼンテーションで顧客に自社商材の魅力を複数個アピールしたい時は、ホールパート法が適しています。
話し手が要点を整理できていなければ、限られた時間で自社商材の魅力を伝えられません。
ホールパート法を用いれば、簡潔に自社商材の魅力を強調できます。聞き手の理解度も高まるので、プレゼンテーションの成功率も高まるでしょう。
社内会議・上司への報告
社内会議や上司への報告にも、ホールパート法が役立ちます。
話が冗長になれば上司や同僚の時間を奪うだけでなく、「仕事ができない人」という印象を与える恐れがあります。
ホールパート法を用いれば、社内会議や上司への報告もスムーズに伝えられるでしょう。
スピーチ
長時間のスピーチは、聞き手の意欲を削ぐ恐れがあります。
話が脱線すれば集中力も低下するので、聞き手に興味を持ってもらえなくなるでしょう。
そこでホールパート法を活用すれば、聞き手にストレスを与えず明瞭簡潔に伝えられます。
自己紹介
自己紹介で、自分の強みや長所を効果的に伝えたいときにも有効です。
たとえば、面接時の自己紹介でホールパート法を活用すれば、限られた時間内でも自分を効果的にアピールできます。
強調したい内容を2回伝えることで、面接官に強く印象づけられるでしょう。
ホールパート法を正しく活用する手順
ホールパート法には手順があるため、活用するには正しい手順を理解する必要があります。
ここでは、ホールパート法を活用する正しい手順を紹介します。
- 話す内容をまとめる
- 強調したいポイントを決める
- ホールパート法の型に当てはめる
- 各パートを簡潔に説明する
- 最後に訴求したい点を丁寧に伝える
ステップ1:話す内容をまとめる
まず、以下のように話す内容をまとめます。
- 相手に何を伝えたいのか
- 伝えたい内容を具体化する
- 具体化した内容の詳細を決める
ホールパート法は複数の要点を伝えるのに適していますが、要点が多くなるほど簡潔にまとめるのが難しくなります。
そこで、相手に何を伝えたいのかを決めてから、さらに内容を3~5つ程度リストアップしてください。さらに設定した内容の詳細を決めておけば、整理しやすくなります。
ステップ2:強調したいポイントを決める
次に、強調したいポイントを決めます。
複数の要点を伝える場合に、全てを強調してしまうとインパクトが弱まり、相手の記憶に残せません。
強調したいポイントを決めておけば、話にメリハリが生まれるので、聞き手も集中しやすくなります。
ステップ3:ホールパート法の型に当てはめる
そして、ここまで整理した内容を、ホールパート法の型に当てはめます。
冒頭で相手に伝えたいことを簡潔に説明できれば、聞き手もこれから聞く内容を理解しやすいでしょう。
ステップ4:各パートを簡潔に説明する
次に、各パートを簡潔に説明していきます。
ただし、パートが複数ある場合は、説明が長くならないように注意してください。より詳しく説明したいという意図でも、話が長くなると聞き手の意欲を削ぐ恐れがあります。
各パートをまとめる際は、聞き手が知りたいと思われる情報を盛り込むのも有効です。
ステップ5:最後に訴求したい点を丁寧に伝える
最後に、訴求したい点を丁寧に伝えることも大切です。
ここまで、全体像と要点を説明しても、聞き手が理解できていなければ意味がありません。
そこで最後にもう一度訴求したい点を丁寧に伝えれば、聞き手の印象に残りやすくなります。
ホールパート法を活用するコツ
ホールパート法を活用するには、コツをおさえておく必要があります。以下に紹介する4つのコツを把握していれば、効果的に訴求できるでしょう。
- 全体像から話すように習慣づける
- 事前に要点を整理し簡潔に伝える
- 最後にしっかりと強調する
- PREP法と併用する
全体像から話すように習慣づける
どのようなシーンでも、はじめに全体像から話すように習慣づけてください。
ホールパート法が身についていなければ、いざ急に話をしなければならなくなったときに、簡潔な説明ができません。
普段からはじめに全体像から話す習慣がついていれば、シーンにかかわらず冷静に対応できるでしょう。
事前に要点を整理し簡潔に伝える
そして、事前に要点を整理して簡潔に伝えるように意識することも大切です。
要点を整理していても、話が長くなれば聞き手は飽きてしまうでしょう。
なお、要点を整理して簡潔にまとめても、実際に話してみると冗長になる恐れがあります。
本番前に声に出して練習するのもおすすめです。文章では気づかなかった改善点が見えてくれば、より簡潔に整理できます。
最後にしっかりと強調する
最後にしっかりと強調して、聞き手の印象に残すことも重要です。
冒頭で一度説明しても、パート部分を説明している間に一番伝えたい要点がぼやけてしまう恐れがあります。
一度だけでは印象に残りづらくても、最後にもう一度繰り返すとより強く印象づけられるでしょう。さらに、こちらが伝えたいことを、理解してもらいやすくなります。
PREP法と併用する
ホールパート法では明瞭簡潔に伝えられますが、より多くの情報を伝えたいならPREP法との併用をおすすめします。
PREP法は、ホールパート法にはない「具体例」を盛り込めるので、聞き手の理解度が高まりやすいのもメリットです。
ただし、時間が長くなるため、状況に合わせた見極めが必要になります。
ホールパート法を活用した例文
それでは、新型スティッククリーナーの紹介を目的とした、ホールパート法活用例文を紹介します。
Whole(全体) | 新型スティッククリーナーの特徴である「軽量・コードレス・吸引力・静音性」を紹介します。 |
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部分(Part) | ・軽量:重量が1kgなので女性や高齢者の方も手軽にお使いいただけます。 ・コードレス:充電式のためコードの煩わしさがなく、コンセントがない場所でもお使いいただけます。 ・吸引力:サイクロン式を採用しているため、軽量でもパワフルな吸引力を実現しました。 ・静音性:従来品と比較して約20%静音性が向上しているため、赤ちゃんやペットがいるご家庭にも安心です。 |
Whole(全体) | 新発売のスティッククリーナーは、「軽量・コードレス・吸引力・静音性」の特徴を兼ね備えており、従来品よりも使い勝手が向上しています。 |
ホールパート法の注意点
では最後に、ホールパート法の注意点を2つ紹介します。
構成に当てはめるだけでは文章にならない
ホールパート法は、コミュニケーション法の一種です。
冒頭でPREP法とSDS法の違いを紹介しましたが、こちらはいずれも文章法則です。
ホールパート法を構成に当てはめても、文章にはならないので注意してください。
心理的に刺さる訴求はできない
そして、心理的に刺さる訴求はできないのも留意点です。
- エモーショナルコピー:広告メッセージで感情を喚起する
- ビジュアルや音楽:視覚的・聴覚的に訴えかけ感情を喚起する
- ストーリーテリング:物語としてストーリーで共感を呼ぶ
- ソーシャルプルーフ:周囲の意見や社会的評価の影響力から妥当性を測る
心理的な訴求が目的なら、感情的訴求を取り入れるといいでしょう。
まとめ:ホールパート法を習得してコミュニケーション力を高めよう
プレゼンテーションや上司への報告などで、伝えたいことを効果的に伝えるにはホールパート法が有効です。
文章でも口頭でも聞き手が理解しやすいので、短時間で伝えたいことを強調できるといったメリットもあります。
本記事で紹介した、正しく活用する手順を参考にしながら、ホールパート法を習得してコミュニケーション力を高めてください。