コールセンターのAHT(平均処理時間)とは?意味や計算式・短縮方法まで解説
コールセンターのAHTは、生産性における重要な指標の一つです。
業務効率化を考えた場合は短縮化が望ましいですが、AHTにおいてはAHTにおいては短ければいいわけではありません。
コールセンターの生産性を考えたときは、その他の指標も関わるため全体を通して考えることが大切です。
そこで本記事では、コールセンターにおけるAHTの意味や計算式、短縮方法について解説します。メリットも紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
AHTとはコールセンターの通話開始から後処理までの対応時間の平均値
AHTとは、オペレーターが電話を受けてから、後処理を終えるまでの対応時間の平均値を表す指標です。
コールセンターには、日々数十〜数百件もの電話がかかってきます。
1件で5分~10分程度なら、オペレーター1人につき1日に30件~40件の対応が可能です。しかし、1件あたり20分~30分または、それ以上の時間がかかることもあるでしょう。
1件あたりにかかる時間が長くなるほど、1日に対応できる件数が減ります。
生産性を重視するなら、AHTの短縮化が欠かせません。
AHT(平均処理時間)の計算式はATT+ACW
コールセンターの生産性に関する指標には、AHTの他にもATTやACWなどがあります。
- AHT(Average Handling Time)平均処理時間
- ATT(Average Talk Time)平均通話時間
- ACW(After Call Work)平均後処理時間
AHTの計算式は、「ATT+ACW」で割り出せます。
例として、ATTが7分でACWが3分だった場合は、AHTは10分です。
AHT(平均処理時間)の適切値
AHTの適切値は、約6分が目安とされています。
1件あたりの時間が短いほど生産性は向上しますが、短すぎると対応が雑になり顧客満足度の低下につながる恐れがあります。
早く通話を終わらせようと機械的な対応になれば、顧客は冷たいと感じるでしょう。オペレーターの対応に不満を持てば、クレームに発展する恐れもあります。
AHTの短縮化で生産性が向上しても、顧客満足度が低下すれば本末転倒です。
AHTは短縮化することも大切ですが、顧客に対して迅速かつ丁寧な対応を心がける必要があります。
コールセンターのAHTを短縮する重要性
AHTが長くなると、顧客満足度の低下につながります。
そもそも、顧客がコールセンターに電話をかけるのは、商品やサービスに対する疑問や不安を解消したいという目的があるからでしょう。
すぐに電話がつながり、疑問や不安を解消できれば満足度は向上します。
しかし、なかなか電話がつながらなかったり、欲しい回答が得られるまでに何度も保留にされたりしたら、不安や疑問は解消されません。それどころか、不満が大きくなりクレームに発展する恐れがあります。
AHTの短縮化は、コールセンター本来の目的である、顧客満足度の向上に欠かせないものです。
コールセンターのAHTが長くなる3つの原因
それでは、コールセンターのAHTが長くなる原因を3つ紹介します。
- オペレーターが顧客の質問に回答できない
- オペレーターの対応・処理業務が多い
- オペレーターのスキルが足りない
オペレーターが顧客の質問に回答できない
AHTが長くなる原因としては、オペレーターが顧客の質問に回答できないことが挙げられます。
経験豊富なオペレーターなら、豊富な知識を持っているので迅速に回答できるでしょう。
経験が浅く知識やスキルに乏しいオペレーターは、顧客の質問の意味が分からなかったり、調べ方が分からなかったりすれば回答できません。
顧客の質問に応えるために上司に指示を仰げば、その間顧客の顧客の待ち時間が増えます。
また、FAQやマニュアルが整備されていないのも要因です。
オペレーターの対応・処理業務が多い
オペレーターの対応や処理業務が多いのも、AHTが長くなる原因です。
オペレーター業務は、電話への対応以外にも電話後の処理や上司への報告、システムへの入力など煩雑化しやすいのが留意点です。
また、コールセンター業務は煩雑化しやすく業務量も多いため、フローが複雑化しやすいといった課題もあります。
オペレーターのスキルが足りない
オペレータースキルのスキル不足も要因です。
この場合に考えられるのは、オペレーターの教育体制が整っていないことが問題として挙げられます。背景にはコールセンター業界全体に共通している、慢性的な人手不足も関係しています。
オペレーターの募集をしても、教育体制が整わないままではオペレータースキルは身につきません。
マニュアルやFAQも整備されていなければ、オペレーターは顧客の質問に応えられず、その結果AHTが長くなってしまいます。
コールセンターにおけるAHTの短縮方法5つ
続いて、コールセンターにおいて、AHTを短縮する5つの方法について解説します。
- オペレーター教育を徹底する
- マニュアル・FAQを整備する
- 運用ルールの見直し・最適化する
- セルフサービスコンテンツを充実させる
- システムを導入する
オペレーター教育を徹底する
オペレーター教育を徹底し、応対品質の向上を図りましょう。
オペレーターの人数を増やしても、スキルが足りなければAHTの短縮は実現できません。
新人オペレーターを対象にした研修制度の導入や、上司や管理者との1on1ミーティングなどを実施するといいでしょう。
新人オペレーターのスキルを底上げすれば、コールセンター全体の応対品質が向上し、AHTの短縮化を図れます。
マニュアル・FAQを整備する
そして、マニュアルやFAQを整備してください。
実際に、よくある質問される内容とその回答をテンプレートとしてパターン化するのもおすすめです。
参考になるものがあれば、オペレーターが回答に困ったとき、マニュアルやFAQを見て対処できる可能性があります。
オペレーター自身で対応できれば、上司に指示を仰ぐ必要もありません。結果的にAHTの短縮につながります。
ただし、顧客ニーズや商品・サービス情報は変化するので、定期的に内容を見直し常に最適化しておくことも大切です。
運用ルールの見直し・最適化する
運用ルールの見直しも有効です。
例えば、複雑な業務フローはAHTを長くしかねません。
業務フローに従っていてもAHTを短縮できない場合は、無駄な工程が含まれている可能性があります。
運用ルールを定めたときから時間が経過していれば、社内環境や顧客ニーズが変わっていることもあるでしょう。
運用ルールは定期的に見直し、最適化しておくことを意識してください。
セルフサービスコンテンツを充実させる
セルフサービスコンテンツを充実させましょう。
よくある質問をまとめた専用コンテンツや、チャットボットを設置すれば、顧客自身が疑問や不安を自己解決できる可能性があります。
セルフサービスコンテンツで問題が解決すれば、顧客もわざわざ電話をかけずに済みます。
顧客は時間や曜日に左右されず、好きなタイミングで利用できるのもポイントです。
システムを導入する
システムを導入し、業務効率化を図るのも有効です。
顧客との通話は、オペレータースキルに左右される部分があります。しかし、それ以外の業務は、システム化することで時短になり、オペレーターの業務負担を軽減できるでしょう。
例えば、コンピューターと電話を統合させる「CTIシステム」なら、パソコン画面に表示される顧客情報を見ながら通話ができます。アウトバウンドコールでは、パソコンからワンクリックで電話をかけられるのもメリットです。
他にも「音声認識」を活用すれば、「通話内容の文字起こし」や「顧客の声を自動収集」するなども簡単になります。
コールセンターのAHTを短縮するメリット3つ
では最後に、コールセンターのATTを短縮する3つのメリットを紹介します。
- 生産性が向上する
- コストを削減できる
- 顧客満足度の向上につながる
生産性が向上する
まず、生産性の向上効果が期待できます。
AHTを短縮すれば、1日にオペレーターが対応できる件数が増えるため、生産性が向上します。
例えば、1人のオペレーターが1日20分AHTを短縮したとしましょう。
1人あたりの顧客にかかる平均時間が10分だった場合は、2件増やせます。
コールセンターの規模が大きくオペレーターの人数が多ければ、AHTの短縮でも大幅な生産性アップも可能です。
コストを削減できる
コスト削減につながるといったメリットもあります。
AHTを短縮して生産性が向上すれば、無理してオペレーターを雇用せずに済む可能性があります。
オペレーター1人の生産性が向上すれば、企業利益の拡大にもつながるでしょう。
AHTの短縮により上がった利益を、オペレーター教育や職場環境の整備に活用すれば、離職率の低下を防げます。これにより採用コストの削減が可能です。
顧客満足度の向上につながる
顧客満足度の向上につながるのもメリットです。
AHTの短縮によって、オペレーターが対応できる件数アップが見込めます。
通話時間や後処理時間を短縮できれば、顧客が待たされる時間も減らせるでしょう。
顧客の待ち時間が減れば、満足度も向上します。結果として、企業のイメージアップになるのは大きなメリットといえるでしょう。
まとめ:AHTを短縮してコールセンターの生産性向上を図ろう
AHTを短縮すれば、コールセンターの生産性が向上する効果が期待できます。
しかし、短縮化するために業務が雑になれば、顧客満足度の低下につながりかねません。
本記事で紹介した情報を参考にしながら、AHTを短縮させてコールセンターの生産性を向上させてください。