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カスタマーハラスメントの事例5選!3つの相談窓口や対策を紹介

カスタマーハラスメント(カスハラ)とは、消費者や取引先から企業や従業員に対して行われる嫌がらせや不快な行為のこと。理不尽かつ妥当性のない内容が多く、中には法的措置を要するものもあります。

ただ、カスタマーハラスメントに対応するといっても判断基準が曖昧で、どう対処していいのか分からないという企業も多いでしょう。

本記事では、カスタマーハラスメントの事例を5選紹介し、具体的な相談窓口や対処法を解説します。

カスタマーハラスメントとは企業や従業員に不当な要求を突きつける行為

カスタマーハラスメント(通称:カスハラ)とは、消費者や取引先から企業や従業員に対して行われる非合理な嫌がらせや不快な行為のこと。要求の内容が、理不尽かつ妥当性を欠いており、事実無根の誹謗中傷も含まれることがあります。

2023年12月時点では、カスタマーハラスメントはまだ法令で定義されていません。

要求を実現するための手段は、口頭での嫌がらせだけでなく暴力や権利侵害といった社会通念上不当とされるものが挙げられます。個人の尊厳を傷つける不法行為に至ることもあるでしょう。

カスタマーハラスメントを受けた被害者は、精神的苦痛を被る可能性が高く、適切な措置を取らないと就業環境の悪化が避けられません。

企業は、カスタマーハラスメントを防止し、適切に対処するための方針や手順を策定することが重要です。

カスタマーハラスメントの判断基準

カスタマーハラスメントの判断基準は、一般的に以下の要素が考慮されます。

  1. 顧客側から暴言や罵声を浴びせられること
  2. 顧客の要求が明らかに妥当でないもの
  3. 長時間にわたって拘束されること
  4. 要求を実現するための手段が脅迫まがいであること

顧客側から暴言や罵声を浴びせられること

顧客からの暴言や罵声を浴びせられることは、カスタマーハラスメントの典型的な行為です。

たとえば、以下のような行為が挙げられるでしょう。

  • 「ブス」「馬鹿野郎」などの暴言
  • 店内に響き渡る大きな声で怒鳴り散らす
  • 従業員を複数人で囲んで罵声を浴びせる

言葉遣いや行動が、脅迫的、差別的、中傷的であるかどうかも判断基準に入れてください。

顧客の要求が明らかに妥当でないもの

相手方の要求が、明らかに妥当性に欠いていることもカスタマーハラスメントの特徴です。

通常のクレームであれば「商品に傷があったから交換してほしい」「このサービスは〇〇が使いづらかったから改善してほしい」というように、商品やサービスなどに対するものが多いでしょう。正当な根拠のもとに要望を伝えます。

カスタマーハラスメントの場合、土下座要求をしたりネット上で悪評を広めたりと、従業員や企業への嫌がらせが目的になります。決して、倫理観的に正当とはいえません。

相手方が行った行為が、他の消費者や従業員にとって明らかに不快であるかどうかも判断基準に入れてください。

長時間にわたって拘束されること

長時間にわたって拘束されることも、カスタマーハラスメントといえます。

たとえば、店内で応対する従業員に長時間不平不満を言い続ける場合や、要求が通るまで居座り続ける場合が挙げられるでしょう。

謝罪と賠償の確約をしなければ帰らないといった、無理難題を突きつけてくることもあります。

要求を実現するための手段が脅迫まがいであること

要求を実現するための手段が、脅迫まがいであることも判断基準にしてください。

たとえば「この要求に応じないと店内のモノを破壊するぞ」「お前の名前を把握したから、どうなっても知らないぞ」といった行為や発言です。

カスタマーハラスメントは、エスカレートすると法的な問題になる可能性があるでしょう。

企業は、法的規制に準拠しカスタマーハラスメントを防止・対処するためのポリシーを策定することが求められます。

実際にあったカスタマーハラスメントの事例5選

ここからは、実際にあったカスタマーハラスメントの事例を5選紹介します。

  1. タオルケット不良品に対して土下座要求
  2. 「話を聞いてくれ」警察署に居座り続け退去を拒む
  3. 後部座席からの暴力行為。タクシー運転手へのカスハラ
  4. 週に400回の迷惑電話をかけて逮捕
  5. スーパーのレジ待ちを拒否し従業員に暴行

タオルケット不良品に対して土下座要求

衣料品チェーンの「しまむら」で、女性が店内で大声を出して従業員に土下座要求をした事例です。

発端となったのは、女性が店で購入したタオルケットに穴が空いていたというもの。店に来るなり「ここまで来るのにかかった交通費を払え!」「土下座して謝れ!」とわめいたのです。

従業員は仕方なく土下座要求に従いましたが、その様子を女性は写真に納め、インターネット上に公開しました。

従業員に土下座をさせネット上で公開した女性は、従業員からの被害届によって警察に逮捕されています。

「話を聞いてくれ」警察署に居座り続け退去を拒む

「自分の話を聞いて欲しい」と男性が約2時間近くにわたって警察署に居座り続けた例です。

一方的な発言を終始繰り返し、職員から退去を警告されたにも関わらず応じなかった男性は、建造物不退去容疑で逮捕されました。

事件が起きた福岡県警ではカスタマーハラスメント指針を打ち出しており、この指針に基づいた逮捕は今回が初となっています。

後部座席からの暴力行為。タクシー運転手へのカスハラ

カスタマーハラスメントは、タクシー車内でも勃発しています。

長年タクシー乗務員に従事している本田さんは、お客が急いでいるときの運転は要注意だと話します。もし、お客が求める時刻に到着できなかったときは、名指しで脅迫まがいな言葉を投げかけられるという経験を何度もしていたのです。

こうした経験は、本田さんに限らず多くのタクシードライバーが受けているといいます。

バス・タクシーには、以前であれば運転手の氏名が記載されていました。

しかし、プライバシーの観点から、2023年8月以降より運転者の氏名提示が廃止されています。

個人情報の流出に配慮し、従業員が安心して働ける職場環境を整備するためです。

週に400回の迷惑電話をかけて逮捕

大手の通信会社に、週に400回の迷惑電話をかけたカスタマーハラスメントの事例です。

加害行為を行った男性は、ラジオ番組への電話がつながらかったことを理由に、契約中の通信会社へクレームを始めました。

電話をかけた回数は、週に400回以上。その内容はクレームでなく嫌がらせに近く「今すぐ謝罪に来い」「ブサイク」など悪質なものでした。

カスタマーハラスメントを行ったこの男性は、業務妨害罪として逮捕に至っています。

スーパーのレジ待ちを拒否し従業員に暴行

食品店においても、カスタマーハラスメントの被害は多発しています。

三重県津市の食品店に訪れた男性は、惣菜をカゴに入れてレジへ向かい、他のお客が並んでいるにも関わらず「先に清算しろ」と言い放ちました。

従業員が要求を断ると、男性は商品を支払わず店を出たのです。別の従業員が男性を呼び止めた瞬間、男は従業員に対して殴りかかりました。

男性は、駆けつけた警察官によって逮捕されました。

カスタマーハラスメントの発言事例7選

カスタマーハラスメントは、あらゆる手段で加害行為を行ってきます。ここでは、カスタマーハラスメントの発言事例を7つご紹介します。

  1. 命令口調や高圧的な態度
  2. 無理のある要求
  3. しつこい電話やメール
  4. 他にいる顧客との比較
  5. 差別的な発言
  6. 人格・能力の否定
  7. プライバシーの侵害やストーカー行為

命令口調や高圧的な態度

従業員に対して命令口調で高圧的な態度をとる行為は、カスハラに該当する可能性があります。

たとえば、以下のような発言が挙げられます。

  • 「馬鹿野郎!もっと早く解決しろ!」
  • 「もし問題が解決しなければ、オフィスまで行って暴れてやるからな」

こうした発言を繰り返す人は、自分の方が立場が上だと錯覚しがちです。

基本的に、従業員と消費者の間には上下関係がありません。相手方が理不尽で高圧的な態度をとった場合は、カスハラと判断したほうがいいといえます。

無理のある要求

カスタマーハラスメントを行う人は、無理のある要求を行う傾向があります。

たとえば、以下のような発言が挙げられます。

  • 「土下座してよ。謝るまで許さないよ」
  • 「(遠方にもかかわらず)今すぐ来い!1時間以内だぞ!」
  • 「もっと値引きしてよ!」

顧客の要求といっても、限度があります。

一般的な要求の範囲を超えるようなら、ハラスメントとして対処してください。

しつこい電話やメール

カスタマーハラスメントは、電話やメールでも行われることがあります。

たとえば、以下のようなケースです。

  • 週に何百回も問い合わせをする
  • 嫌がらせ目的で執拗に電話する
  • 長文で繰り返しメールを送信する

電話やメールは、対面とは異なり時間や場所の制約を受けづらく、カスハラを行うハードルが低いものです。

また、メールの場合はやりとりの履歴が残るため、万が一不適切な返答をしてしまうとインターネットに拡散されてしまう可能性があるでしょう。

オンライン上でのカスタマーハラスメントは、特に注意してください。

他にいる顧客との比較

他の顧客を比較して理不尽な要求を行うことも、カスハラでよくある事例です。

たとえば、以下のようなケースです。

  • 「向こうの店舗ではここより安いから、こっちでも値下げしろ」
  • 「あの客に出されたパスタの量が多いぞ!こっちももっと大盛りにしろ!」

こうした理不尽な要求は、従業員に迷惑をかけるだけでなく、他の顧客にとっても悪影響を及ぼしかねません。店舗の運営にもかかわるため、適切な処置が求められます

差別的な発言

差別的な発言も、カスタマーハラスメントの事例の一つです。

たとえば、以下のような発言です。

  • 「あなたのような〇〇人はサービスを提供する資格がない。」
  • 「女性は仕事ができないと思っていたけど、やっぱりだめだね。」

差別的な発言は、相手を傷つけ不快にさせる可能性があります。

特に、国籍や宗教に関する差別は大きな問題に発展するリスクがあるでしょう。適切な対処が必要です。

人格・能力の否定

カスタマーハラスメントは、人格や能力を否定することもあります。

たとえば、以下のような発言です。

  • 「君たちはなんて頭が悪いんだ。給料泥棒と一緒だね」
  • 「お前みたいな無能な従業員はクビになるべきなのでは?」

他者を馬鹿にするような発言や態度を取ることは、基本的に許されません。

従業員の精神衛生上でも大きな悪影響があるので、早めの対処を心がけてください。

プライバシーの侵害やストーカー行為

プライバシーの侵害やストーカー行為も、カスタマーハラスメントに含まれます。

たとえば、以下のようなケースです。

  • 「君の名前を把握したからね。住所や電話番号を特定しようかな」
  • 「こんなにかわいいオペレーターと話すのは初めてだな。付き合ってよ」

こうした発言を発端に、ストーカー行為に発展したり権利侵害を受ける恐れがあるかもしれません。

被害が起きてからでは手遅れになりかねないので、個人情報を保護する対策を取るようにしてください。

カスタマーハラスメントの相談窓口3選

カスタマーハラスメントの被害を受けた際に利用したい相談窓口を3つ紹介します。

  1. こころの耳:厚生労働省
  2. 警察
  3. 弁護士

こころの耳:厚生労働省

こころの耳は、厚生労働省で開設している「労働者のメンタルヘルス」に関するさまざまな相談を受け付けている窓口です。

カスタマーハラスメントの被害は、従業員のストレスやメンタルヘルスに影響を及ぼす可能性があるでしょう。被害内容によっては、職場に相談しづらい方もいらっしゃるかもしれません。

こころの耳に問い合わせることで、 「相談窓口の紹介」や「ストレスチェック」を行ってくれます。相談方法は、電話相談・メール相談・SNS相談から選べます。

土日も対応してくれるので、平日仕事で忙しい方でも気軽に相談できるでしょう。

こころの耳公式サイトはこちら

警察

警察への相談も有効です。

よくある事例でも紹介したとおり、カスタマーハラスメントの手段は、暴力や権利侵害が伴うこともあります。

内容によっては、業務妨害罪や侮辱罪、名誉毀損罪といった犯罪が成立する可能性もあるでしょう。被害を放置しておくことで、取り返しのつかない事態になりかねません。

被害内容が不法行為に該当すると判断した場合、警察へ相談することをおすすめします。

弁護士

弁護士への相談もおすすめです。

弁護士であれば、警察で対応できない事案に対しても法に基づいて対処してくれます。

弁護士に相談する際は、労働問題やハラスメントに精通した弁護士を選ぶといいでしょう。

カスタマーハラスメントへの対応に詳しい弁護士へ相談することで、スピーティーかつ的確なアドバイスがもらえます。

相手に慰謝料を求める際においても、弁護士に依頼することで民事手続きを一任できます。

カスタマーハラスメントの対策

カスタマーハラスメントの被害から従業員を守るために、企業が行うべき対策を3つ紹介します。

  1. カスタマーハラスメントに対する社内方針を確立する
  2. カスタマーハラスメントへの対応マニュアルを作成する
  3. カスタマーハラスメントの相談窓口を社内に設置する

カスタマーハラスメントに対する社内方針を確立する

カスタマーハラスメントに対する社内方針を確立しましょう。

社内方針は、カスタマーハラスメントの定義や判断基準、被害に遭った際の対処方法についてまとめてください。

カスタマーハラスメントに対する措置や規定も設けましょう。違反行為に対して取られる具体的な措置罰則について記載する必要があります。

カスタマーハラスメントへの対応マニュアルを作成する

カスタマーハラスメントに対処するための対応マニュアルを策定し、全従業員に周知しましょう。

対応マニュアルに基づいて、ハラスメントの概念や予防策、対処方法についての定期的なトレーニングを実施してください。

カスタマーハラスメントの相談窓口を社内に設置する

従業員がカスタマーハラスメントに遭遇した場合、いつでも相談できるような仕組みを確立します。具体的には、相談窓口や専門の担当者を設置するといいでしょう。

相談できる窓口がないと、離職につながりかねません。大切な従業員を守るためにも、従業員が安心して働ける環境を提供することが大切です。

まとめ:カスタマーハラスメントの事例を把握して危険から従業員を守ろう

カスタマーハラスメントは、従業員のメンタルヘルスや企業の運営にも影響するため、決して放置すべきではありません。

ハラスメントから従業員を守りつつ、顧客との健全な関係を維持するためにも、徹底した対策を行ってください。

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