ロイヤルカスタマーとは優良顧客との違いや作り方を詳しく解説
企業が競合他社との差別化を図り、売上を上げるにはロイヤルカスタマーの存在が欠かせません。
しかし、ロイヤルカスタマーの割合は非常に少ないため、獲得するのは困難な傾向にあります。また、獲得できても育成しなければ、企業の成長にはつながらないでしょう。
「ロイヤルカスタマーと優良顧客の違いがわからない」
「ロイヤルカスタマーの育成方法を知りたい」
このような悩みを持つ担当者は少なくありません。
そこで本記事では、ロイヤルカスタマーの定義や、優良顧客との違いについて解説します。育成方法も紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
ロイヤルカスタマーとは愛着や信頼のある顧客のこと
ロイヤルカスタマーとは、企業や企業が提供する商品・サービスに愛着を持ち、継続的に購入や利用をする顧客のことです。
競合他社で同じような商品やサービスを提供していても、ロイヤルカスタマーは1つの企業を信頼し利用し続けます。
商品・サービスがより良いものになるように、積極的にフィードバックを行うのも特徴です。さらに、周囲の人へ推奨してくれることもあります。
企業におけるロイヤルカスタマーの割合は ?
企業におけるロイヤルカスタマーの割合は、パレートの法則で割り出すことができます。
パレートの法則は、1880年代にイタリアの経済学者が見出したもので、ロイヤルカスタマーの割合は2割とあまり多くはありません。
しかし、ロイヤルカスタマーは競合他社に移行することなく、継続的に利用するため売上の8割を占めるともいわれています。
割合は少なくとも、企業の売上を安定させるという意味では、ロイヤルカスタマーの存在が欠かせません。
ロイヤルカスタマーと優良顧客・リピーターとの違い
それでは、ロイヤルカスタマーと優良顧客、リピーターの違いをそれぞれに比較してみましょう。
- 優良顧客との違い
- リピーターとの違い
優良顧客との違い
ロイヤルカスタマーと優良顧客の違いは、利用頻度と売上貢献度です。
優良顧客は、単発での売上貢献度は高いものの、継続利用するとは限りません。キャンペーンなどお得に利用・購入できる情報を入手すれば、他社に移行する可能性があります。
一方、ロイヤルカスタマーは、企業に愛着を持ち信頼を寄せているので、継続的に利用し他社へ移行することはほとんどありません。
気に入った商品・サービスを継続的に利用するため、売上貢献度も高いといえるでしょう。
リピーターとの違い
リピーターは、気に入った商品・サービスを継続的に購入・利用するのはロイヤルカスタマーと同じです。
しかし、企業に愛着を持ち信頼を寄せているとは限りません。
気に入っている間は継続利用しますが、他に魅力的な商品・サービスを見つければ、移行する可能性があります。
ロイヤルカスタマーの育成が大切な理由
次に、ロイヤルカスタマーの育成が大切とされる理由を3つ紹介します。
- 新規顧客を獲得できる
- LTVの向上で売上の安定につながる
- 顧客からの声やフィードバックが得られる
新規顧客を獲得できる
ロイヤルカスタマーを育成すれば、新規顧客の獲得につながります。
少子高齢化による市場の縮小に伴い、新規顧客の獲得が困難になっています。
しかし、ロイヤルカスタマーを育成すれば、口コミやSNSでポジティブな情報を発信・拡散してくれるでしょう。
特にSNSは情報拡散力に優れているので、宣伝費の節約にもつながります。
LTVの向上で売上の安定につながる
そして、LTV(Life Time Value)の向上により、売上の安定につながるのもメリットです。
LTVとは、顧客生涯価値のこと。顧客が企業と取引し続ける間、どれだけ利益をもたらしたかを表します。
ロイヤルカスタマーであれば、愛着や信頼を抱くので、アップセルやクロスセルも期待できます。
企業がロイヤルカスタマーを育成すれば、売上の安定につなげられるでしょう。
顧客からの声やフィードバックが得られる
顧客からの声やフィードバックが得られるのも、企業にとってはメリットです。
特にロイヤルカスタマーは、企業に愛着や信頼を抱いているからこその、良質なフィードバックをする傾向が見られます。
中にはクレームやネガティブな意見も含まれますが、それを改善に活かせれば、商品やサービスをより良いものにできるでしょう。
ロイヤルカスタマー・顧客情報の分析方法
ロイヤルカスタマーや顧客情報を分析するには、以下の3つの方法があります。
- RFM分析
- CPM分析
- NPSの活用
それぞれに詳しく見ていきましょう。
RFM分析
RFM分析は、「Recency・Frequency・Monetary」の3つの指標を元にしています。
- Recency:最終購入日
- Frequency:購入頻度
- Monetary:購入金額
さらに、各指標を5つのスコアに分けて分析を行います。
スコア | Recency | Frequency | Monetary |
---|---|---|---|
5 | 30日未満 | 40回以上 | 20万円以上 |
4 | 30日以上 | 30回以上 | 15万円以上 |
3 | 60日以上 | 20回以上 | 10万円以上 |
2 | 90日以上 | 10回以上 | 5万円未満 |
1 | 180日以上 | 10回未満 | 2万円未満 |
各指標を元にスコアに当てはめ分析した結果から、「優良・見込み・離反」にセグメント分けします。
CPM分析
CPM(Customer Portfolio Management)分析は、顧客を分類する際の指標です。
分析方法は、RFM分析の3要素に、「在籍期間や離脱期間」をプラスして分析します。
実際に分析する際は、各要素を5つに分類するのが特徴です。
要素 | 在籍顧客 | 離脱顧客 |
---|---|---|
初回客 | 1回購入 | 1回購入後に離脱 |
よちよち客 | 短期間のリピート購入 | リピート購入後に離脱 |
コツコツ客 | リピート期間は長いが購入金額が低い | 長期間小額のリピート購入後離脱 |
流行客 | 一定期間大きい購入金額があった | 大きい購入金額を一定期間続けた後に離脱 |
優良客 | 購入金額が大きく利用期間が長い | 一定期間大きい購入金額があったが離脱 |
顧客をセグメント分けすることで、優良客を見極めやすくなるでしょう。
NPSの活用
そして、NPS(Net Promoter Score)の活用も有効です。
NPSとは、顧客推奨度調査のこと。NPSを活用すれば、顧客が企業にどのくらい愛着や信頼を抱いているかを把握できます。
NPSは、アンケートを実施して、その結果を集計して見出します。
- Promoter(推奨者):9点~10点
- Passive(中立者):7点~8点
- Detractor(批判者):6点以下
まずは、アンケート結果を3つに分類します。
集計結果を元に「推奨者-批判者=NPS」の計算式に当てはめたものがNPSです。
結果は「-100~+100」まであり、推奨者が多いほどスコアは高くなります。
しかし、日本ではマイナスよりになる傾向が見られます。日本人は中間寄りの評価をすることが多いのが理由です。
スコアが低くてもあまり気にする必要はありません。
ロイヤルカスタマーの育成手法5つ
続いて、ロイヤルカスタマーを育成する5つの方法を紹介します。
- CRM(顧客関係管理)
- CEM(顧客経験価値管理)
- One to Oneマーケティング
- MA
- アンバサダーマーケティング
CRM(顧客関係管理)
CRM(Customer Relationship Management)は、顧客関係管理を意味します。
ロイヤルカスタマーの育成においては、ツールを活用するのが一般的です。
CRMツールには、「オーダーメイド型」と「ノンオーダーメイド型」の2種類があります。
ノンオーダーメイド型は、簡易的な機能しか搭載されていませんが、その分コストをおさえられるのがポイントです。
機能性を重視するなら、オーダーメイド型が適しています。既存システムとの連携も可能なので、CRMツールを導入する際は、必要な機能が搭載されているかを確認しましょう。
CEM(顧客経験価値管理)
CRM(Customer Experience Management)は、顧客経験価値管理のことです。
顧客の視点で、購入経緯やシーンを想定しながら分析します。
CEMは、顧客の感情を分析するため、CXの向上につながる効果が期待できます。
One to Oneマーケティング
One to Oneマーケティングは、顧客一人ひとりに合わせてマーケティングを行う手法です。
個々の顧客にアプローチすることで、より詳細な顧客ニーズを見出せます。
顧客ごとのニーズを企業が把握できれば、顧客視点で見たとき、企業が自分のことを理解してくれていると理解してもらえるでしょう。
これにより、企業への愛着や信頼が増せば、ロイヤルカスタマーになる可能性が高くなります。
MA
MA(Marketing Automation)は、個々の顧客へのアプローチを自動化することです。
主な目的は顧客にメッセージを届けること。CRMとの連携により、効果的なアプローチができます。
MAもツールを活用できますが、必要な機能が搭載されたものを選ぶことが大切です。
MAを活用すれば、効果的にメッセージをとどけられるでしょう。
アンバサダーマーケティング
アンバサダーマーケティングは、顧客をアンバサダーに任命して活用する手法です。
アンバサダーには、企業が扱う商品・サービスを無料で提供します。
ここでポイントとなるのが、アンバサダーは一般人から選出されること。著名人やインフルエンサーの起用は、一見効果的に思えるでしょう。
しかし、多くの場合広告と受け取られやすいため、否定的な見方をされる可能性もあります。
そこで一般人である顧客をアンバサダーに任命すれば、親近感を持ちやすく多くの人に訴求できるでしょう。
ロイヤルカスタマーの作り方6ステップ
では最後に、ロイヤルカスタマーの作り方を6つのステップに分けて紹介します。
- 現時点の顧客ロイヤルティを把握する
- ブランド価値・存在感を強化する
- 顧客の感動体験を生み出して取り組む
- 競合他社との差別化を図る
- 顧客体験の効果検証と改善をする
現時点の顧客ロイヤルティを把握する
まず、現時点での顧客ロイヤルティを把握することが大切です。
顧客ロイヤルティを把握できなければ、顧客に寄り添った商品・サービスを提供できないでしょう。企業が顧客により添えなければ、顧客満足度の低下につながり、企業の信頼を損なう恐れがあります。
顧客ロイヤルティの把握には、徹底した調査と分析が必要です。
ブランド価値・存在感を強化する
次に、ブランド価値や存在感を強化します。
顧客から選んでもらいロイヤルカスタマーにつなげるには、企業のブランド価値や存在感の強化が欠かせません。
自社商品・サービスを利用するとどんなメリットがあるのかだけでなく、ベネフィットも訴求するといいでしょう。
優先する顧客を定める
そして、優先する顧客を定めることも大切です。
闇雲に顧客を選んでも、必ずロイヤルカスタマーになるとは限りません。
優先すべき顧客を見極めるには、顧客セグメントの活用が有効です。
年齢や性別の他、ライフスタイルや購買行動など、できるだけ細かくセグメント分けをして分析しましょう。
顧客の感動体験を生み出して取り組む
次に、顧客の感動体験を生み出して取り組みましょう。
自社商品・サービスに対して、愛着や信頼を持ってもらうには、顧客満足度を向上させる必要があります。
そのためには、CXの見直しが必要です。
CXの見直しには、アンケートやインタビューの実施や、分析ツールを活用するといいでしょう。
競合他社との差別化を図る
競合他社との差別化を図ることも大切です。
新規顧客を獲得し、ロイヤルカスタマーに育成するには、他にはない自社だけの魅力をアピールする必要があります。
どんなに豪華な特典を追加しても、他と同じようなものでは効果的な訴求は実現できません。
顧客が選びたくなるような、魅力的な体験を提供するためには、競合他社との差別化が必要です。
顧客体験の効果検証と改善をする
顧客体験は、効果検証と改善を繰り返しましょう。
顧客ニーズは日々変化しているため、感動体験を与えられてもニーズが変われば他社に移行する恐れがあります。
そこで、その都度顧客体験の効果を検証してください。検証によって課題が見つかっても、改善すれば顧客満足度の向上につなげられます。
顧客満足度の向上は、ロイヤルカスタマーの育成にも役立つでしょう。
まとめ:ロイヤルカスタマーを育成して企業の売上アップにつなげよう
ロイヤルカスタマーは、全体の約2割と少ないものの、企業の売上の8割を占めると言われています。
少子高齢化や人口の減少に伴う市場の縮小により、新規顧客の獲得は年々困難になっています。
しかし、顧客ニーズを把握して顧客に感動体験を与えることができれば、新規顧客の獲得につながるでしょう。
そこからロイヤルカスタマーを育成していけば、企業の売上アップにもつながります。