自治体営業は難しい?課題や手法・成功する10個のコツをわかりやすく解説
自治体営業は、民間営業に比べて意思決定プロセスが複雑なため、難しいというイメージを持たれがちです。
「自治体営業はなかなかアポイントが取れない……」
「自治体営業を成功させるコツが知りたい」
このように考える管理者や営業担当者もいるでしょう。
そこで本記事では、自治体営業の課題や手法について解説します。成功させるコツや注意点も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
自治体営業の特徴
自治体営業は、民間営業とは異なり、入札後に発注をもらわなければなりません。
さらに、入札には種類があり、それぞれ形式が異なります。ここでは、自治体営業の特徴を紹介します。
- 入札の種類は4つ
- 予算編成のプロセスは1年がかり
入札の種類は4つ
まず、自治体営業における入札の種類は4つの形式があります。
形式 | 概要 | 参加資格 |
---|---|---|
一般競争入札 | 不特定多数の事業者を募り最安値を提示した企業と契約を締結する | 参加資格を有するすべての事業者 |
指名競争入札 | 指名された事業者の中で最安値を提示した企業と契約を締結する | 指名された事業者 |
随意契約 | 任意で決定した事業者と契約を締結する | ・地方自治法施行令第167条の2第1項 ・地方 公営企業法施行令第21条の14の第1号から第9号 上記のいずれかの規定に該当する場合 |
規格競争入札 (プロポーザル) | 事業者の提案力・技術力・実績などから判断し契約する企業を決定する | ・公募型:発注者から指名された業者 ・指名型:事前の抽選で選ばれた中から指名された業者 ・環境配慮型:環境に配慮する技術提案ができる事業者 |
このように、入札の種類で仕組みが異なります。なお、企画競争入札に関しては、種類によって参加条件が異なることに留意しましょう。
予算編成のプロセスは1年がかり
自治体営業における予算編成プロセスは、1年がかりになるのも特徴です。
サイクル | プロセス |
---|---|
情報収集期:4月~6月 | 次年度予算に関する情報を収集する |
計画期:7月~9月 | 収集した情報に基づき次年度計画を開始する |
予算方針決定期:10月~12月 | 財務部局が予算方針や査定期を決める |
予算決定期:1月~3月 | 議会の予算承認で入札が公示され入札に参加できる |
自治体では4月が新年度であり、かつ引き継ぎが発生するため多忙を極めます。
計画期は、自治体・民間企業共に営業が活性化する「最重要期」です。
自治体の各部署には、予算決定権がありません。そのため予算方針決定は、財務部局によって行われます。
その後議会により予算承認が入ると、要約入札公示が出るので、公示を確認してから入札への参加が可能になります。
自治体営業の課題
なぜ自治体営業は難しいと言われるのか、自治体営業の課題と照らし合わせながら原因を紹介します。
- 飛び込み営業がしづらい
- 入札や公募に関する知識が必須となる
- 提案のタイミングが限定される
- 加点ではなく減点評価がされる
- 人脈やコネに依存すると難しい
- 導入までのプロセスが多い
- 新規事業が参入しづらい
飛び込み営業がしづらい
飛び込み営業は、直接接点を持てるのがメリットですが、自治体営業においては相性が悪い営業手法です。
その理由として、自治体同士の距離が離れているため移動に時間がかかることが挙げられます。
1日にアプローチできる件数が限られるため、営業効率は高くありません。
入札や公募に関する知識が必須となる
民間営業であれば、営業担当者のスキルが高いほど成約率もアップします。
しかし、自治体営業では、入札や公募に関する知識が必要不可欠です。
また、入札への参加にも条件が設定されているため、参加資格を満たさなければ入札には参加できません。
提案のタイミングが限定される
自治体営業においては、予算編成プロセスに1年を要します。さらに、予算決定期が決まっているため、提案のタイミングも限定されます。
最適なタイミングで提案するには、予算決定機から逆算して営業プロセスを組み立てなければなりません。
加点ではなく減点評価がされる
そして、加点ではなく「減点評価」となるのも課題です。
- 加点評価:0点からスタートして良い点を加点していく
- 減点評価:100点からスタートしてマイナス要素を差し引く
背景には、「自治体が税金で運営されている組織である」という理由が関係しています。
もし契約した事業者が、思うような成果を出せなければ、税金が無駄になる恐れがあります。リスクを回避する意味で、減点評価を採用しているのです。
人脈やコネに依存すると難しい
民間営業では、成果につなげるための手段として、人脈やコネを最大限に活用します。
しかし、自治体営業では人脈やコネに依存できません。
- 定期的に人事異動がある
- 選挙で担当者が変わる場合がある
- 自治体には発注の権限がない
このような理由から、人脈やコネに依存する営業手法は難しいのも要因です。
導入までのプロセスが多い
前述の通り、自治体営業は導入や契約プロセスが複雑です。
たとえば、民間営業ならリードタイムは、最短で60~90日前後です。
しかし、自治体営業ではプロセスが決まっているため、営業効率は高くありません。
新規事業が参入しづらい
自治体の財源は税金ということもあり、保守的な傾向が見られます。
そのため、実績のない新規事業の参入は、なかなか受け入れてもらえません。
受け入れてもらうには、実績はもちろん、納得してもらえる根拠や理由などの材料が必要です。
自治体営業の手法5選
では次に、自治体営業の手法を5つ紹介します。
- テレアポ
- DM(ダイレクトメール)
- 情報誌への広告掲載
- オンラインセミナー
- 展示会
テレアポ
テレアポは「アポイントを取り付けること」を目的に自治体に電話をかけてアプローチする手法です。
アポイントを取り付けてから商談に進むので、営業感を出しすぎないように注意しなければなりません。
また、お互いの顔が見えない電話越しの対応となるため、トークスキル・コミュニケーションスキル・傾聴力などが求められます。
移動せずに行えるため、効率よくアプローチができます。
DM(ダイレクトメール )
DM(ダイレクトメール)は、紙媒体やEメールを送る方法です。
大量送付が可能であり、地理的な制約もないため、効率よくアプローチできます。
一度に多くの情報を伝えられますが、開封してもらえなければ意味がありません。
- 目を引くように大きな封筒を使う
- 立体感のある箱型DMを使う
- ノベルティを入れて立体感を出す
開封率を高めるには、読みたくなるような興味を引き立てることも大切です。
なお、FAXを活用する「FAXDM」という選択肢もあります。
記載できる情報は限られますが、開封の手間がなく視認性に優れているのがメリットです。
情報誌への広告掲載
自治体向けの情報誌に、広告を記載する方法もあります。
情報誌を手に取った時、広告が目に入るので効果的に訴求できるのがメリットです。
多くの自治体では、紙媒体を使うことが多いため、受け入れてもらいやすいでしょう。
オンラインセミナー
オンラインセミナーも有効な手段です。
自治体は地域の課題を解決するために、徹底した情報収集をします。その一環として、セミナーに参加することも少なくありません。
オンラインセミナーは、場所を問わず参加できるので、担当者との接点を持ちやすいのもメリットです。
展示会
展示会に足を運ぶのは、商品やサービスに高い関心や興味があると考えられます。
すぐにアポイントを獲得できなくても、名刺や連絡先を交換しておけば、思い出した時に先方からアプローチしてもらえる可能性があります。
ただし、ブースに足を運んでもらうには、レイアウトや他社との差別化などの対策が欠かせません。
自治体営業を成功させる10個のポイント
自治体営業のプロセスを理解していても、入札に参加できなければ成果にはつながりません。
成功させるには、以下に紹介する10個のポイントを最大限に活用してください。
- 徹底的に情報収集してターゲットを絞る
- 自治体のニーズを正しく理解する
- 担当者と綿密にコミュニケーションを取る
- キーパーソンと良好な関係性を構築する
- 専門用語の使用を避ける
- 地域企業との信頼関係を構築する
- 導入後の運用やサポートまでイメージを持つ
- 紳士的で誠実な対応をする
- コンプライアンスを遵守する
- 社会的課題を解決するという意識を持つ
それぞれ詳しく見ていきましょう。
徹底的に情報収集してターゲットを絞る
まず、ターゲットを絞るための情報収集を徹底してください。
- ステップ1:人口・産業・財政状況などの概要を把握する
- ステップ2:自治体の課題を把握する
- ステップ3:最終的なターゲットを絞り込む
この通りに進めていけば、営業戦略を立てやすくなります。
自治体のニーズを正しく理解する
自治体によってニーズが異なるので、ターゲットのニーズを正しく理解することが大切です。
また、自治体の予算には上限があるため、財政状況が厳しいと十分な予算を配分できない恐れがあります。
予算は自治体営業において非常に重要なので、予算編成のプロセスも正しく理解する必要があります。
担当者と綿密にコミュニケーションを取る
自治体営業におけるプロセスは、複雑かつ長い時間がかかるため、担当者とは長期的な関係性の構築が必要不可欠です。
コミュニケーションが不足すれば、自治体の課題を正しく把握できません。的外れな提案をすれば、信頼を得られないでしょう。
担当者とは、綿密にコミュニケーションを取ってください。また、地域を理解して寄り添いながら真摯に向き合うことも大切です。
キーパーソンと良好な関係性を構築する
さらに、キーパーソンと良好な関係性を構築するのも重要な要素です。
自治体営業における意思決定には、自治体トップの首長や副首長といった、キーパーソンからの理解が得られているかも関係してきます。
自治体営業の成功には、各部門とのコミュニケーションも意識しなければなりません。
セミナーやワークショップに参加してもらえれば、庁内における横展開の促進にも役立つでしょう。
専門用語の使用を避ける
民間営業では専門用語を使うことも多いですが、自治体営業では専門用語の使用を避けた方がいいでしょう。
普段から業界特有の英語や造語を使っていると、意識せずに使ってしまう恐れがあります。
自治体営業では、専門用語を避け、誰が聞いてもわかるように話してください。
ただし、状況によっては専門用語を使わざるを得ないこともあります。解説できるように、資料や文章を用意してください。
地域企業との信頼関係を構築する
自治体営業において、地域企業との信頼関係構築は非常に重要な要素です。
地域を活性化するには、自治体と地域企業の連携が欠かせません。
地域に精通している企業と信頼関係を構築できていれば、情報収集もしやすく、自治体からも信頼してもらいやすくなるでしょう。
導入後の運用やサポートまでイメージを持つ
自治体営業は、成約がゴールではありません。
自治体が安定して業務を遂行するためにも、導入後のサポートもイメージしてください。
たとえば、導入にICT(情報通信技術)スキルが求められるのに、自治体の職員が使いこなせなければ業務に支障が出ます。
こうした課題には、職員研修の提案が有効です。
課題は自治体によって異なるので、ニーズにマッチした提案ができるように、運用やサポートまで見据えた提案が求められます。
真摯的で誠実な対応をする
自治体で働く職員は、地域に貢献するために仕事をしています。
提案内容が優れていても、ビジネスマナーに反した立ち振舞があれば、悪いイメージを与えかねません。
自治体営業では、真摯的に誠実な対応を心がけてください。
コンプライアンスを遵守する
民間営業でも、コンプライアンスを遵守しなければ、企業価値を維持できません。
公的機関である自治体は、特にコンプライアンスに関する意識が高い傾向があります。
また、自治体の職員は公務員となるため、公務員倫理規程に関する理解も必要です。
もし、営業活動の中に規定違反があれば、自治体の職員が処罰されることになりかねません。
自治体営業では、コンプライアンスを遵守してください。
社会的課題を解決するという意識を持つ
自治体は、社会的課題を解決するために存在する組織です。
しかし、自治体だけでは解決できない問題も少なくありません。
そこで、民間企業のノウハウを活用して、課題を解決します。
民間営業では、自社商品やサービスを売り利益につなげるのが目的ですが、自治体では社会的課題を解決するという意識を持ってください。
自治体営業を実施する際の注意点
では最後に、自治体営業を実施する際の注意点を紹介します。
- 最初から営業活動をしない
- 地域の特性や文化に配慮する
- アポ取りのNGワードを避ける
最初から営業活動をしない
自治体は保守的な傾向が強いので、新規事業が受け入れられにくいのが懸念点です。
どんなに優れた商材でも、最初から営業感を出しすぎると警戒される恐れがあります。
まずは、地域の課題解決につながることをアピールしましょう。
地域の特性や文化に配慮する
自治体は地域と密着しているため、地域への配慮が感じられなければ信頼してもらえないでしょう。
- 地域のお祭りや恒例行事に参加する
- 地域に根付いた文化と歴史を学ぶ
- 地域の飲食店を利用する
このように、地域に溶け込む努力を重ねれば、特性や課題を理解できるでしょう。商談の際に経験に基づく話を取り入れれば、信頼してもらいやすくなります。
アポ取りのNGワードを避ける
自治体営業でテレアポを実施する際には、NGワードがあるので注意しましょう。
- 弊社の〇〇を紹介させてください
- 一度ご挨拶に伺ってもよろしいでしょうか
- 3分ほどお時間をいただけますでしょうか
このように提案すると、忙しいと断られる可能性があります。
民間営業では有効なワードでも、自治体営業では通用しません。自治体は地域の課題解決が最優先事項です。
アポ取りでは、地域課題の解決に役立つことを強調してください。
まとめ:自治体営業は相手の特徴を理解して誠実に行おう
自治体営業は、入札後の発注や予算編成プロセスが長いなど、民間営業とは異なる点が多くあります。
また、自治体ならではの課題も多いため、自治体営業への理解を深めることが大切です。
本記事で紹介した情報を参考にしながら、自治体営業の特徴を正しく理解して、真摯的かつ誠実に営業活動を行ってください。