提案型営業とは?他の営業手法との違いやメリット・実践手順を紹介
近年、インターネットの普及に伴う消費者行動の変化や、ニーズの多様化により従来の売り込み営業では成果につながりにくくなる傾向があります。
このような状況に対応するために、注目されるようになったのが「提案型営業」です。
提案型営業は、顧客ニーズにマッチした提案ができるため、顧客と長期的な関係性を構築できます。
しかし、これまでの営業手法から提案型営業へ切り替えるのは容易ではなく、体制の整備や専門的な知識を持つ人材の確保などの課題があります。
本記事では、提案型営業について詳しく解説します。必要とされる背景やメリット、実践手順も紹介しますのでぜひ参考にしてください。
提案型営業とは ?
提案型営業とは、顧客が抱える課題を引き出し、解決策を提案する営業手法です。
これまでの売り込み営業は、顧客に自社商品やサービスのメリットやベネフィットを訴求し、成約につなげるのが目的でした。
しかし、インターネットが普及した昨今では、顧客は欲しい情報を自由に入手できます。
顧客自身で課題を解決できてしまえば、従来の営業手法は通用しません。企業は顧客との接点を持つ機会を失うため、売上が低下する恐れがあります。
提案型営業は、顧客が抱える課題(顕在ニーズ)を引き出し、最適な解決策を提案する手法です。
さらに、提案型営業では、顧客自身が把握できていない「潜在ニーズ」も引き出せます。
顧客にとって最適な解決策を提案できれば、顧客の信頼を勝ち取れるでしょう。良好な関係性を構築し顧客ロイヤリティを高められれば、売上向上にもつながります。
提案型営業が必要とされる背景
企業が成長し続けるには、新規顧客開拓を獲得して売上を拡大させる必要があります。
しかし、インターネットが普及した近年では、顧客自身で必要とする情報を自由に入手でき、商品やサービスを簡単に比較検討できてしまいます。
こうした状況では、単なる闇雲な営業は通用しません。顧客ニーズにマッチした最適な提案が求められます。
提案型営業は、顧客の「顕在ニーズ」だけでなく、「潜在ニーズ」も引き出せます。
さらに、新規顧客を獲得するには、競合他社との差別化も欠かせません。
競合他社にはない自社だけの強みをアピールできれば、差別化を図れるだけでなく、顧客満足度の向上にもつながるでしょう。
提案型営業とその他の営業手法の違い
それでは、提案型営業とその他の営業手法の違いを紹介します。
- 提案型営業とソリューション営業の違い
- 提案型営業と売り込み営業の違い
- 提案型営業とルート営業の違い
提案型営業とソリューション営業の違い
提案型営業とソリューション営業の違いは、提案の定義 にあります。
提案型営業は、顧客の課題を引き出し、どのようにしたら解決できるのかという「解決策を提案」します。解決策を提案することで、不安を解消できるとのアピールにもなります、
一方、ソリューション営業は、顧客の課題に対して、「自社商品やサービスが役立つと提案」するのが特徴です。解決策を提案するのは共通していますが、自社商品やサービスの訴求を前提としています。
提案型営業と売り込み営業の違い
売り込み営業は、定期的に顧客先を訪問し、必要に応じて注文を受け商品を納品します。
顧客の要望に応えるため、受け身の営業スタイルです。
一方の提案型営業は、顧客の課題解決策を提案します。企業から解決策を提案する攻めのスタイルであり、顧客満足度の向上を目指します。
提案型営業とルート営業の違い
提案型営業とルート営業は、目的が異なります。
ルート営業は、既存顧客に対して継続的に自社商品やサービスを利用してもらうのが目的です。
提案型営業は、顧客満足度の向上を目的としています。
なお、提案型営業もルート営業も、顧客ニーズにマッチしていなければ、自社商品やサービスを売り込まないところは共通しています。
提案型営業を導入する6つのメリット
では次に、提案型営業を導入するメリットを6つ紹介します。
- 幅広いニーズに対応できる
- 無理に売り込まないので信頼されやすくなる
- 顧客と長期的な関係性を構築できる
- リピーターを獲得しやすい
- 新規顧客開拓にもつながる
- 顧客単価の向上を狙える
幅広いニーズに対応できる
幅広いニーズに対応できるのは、企業にとって大きなメリットです。
インターネットの普及やAI技術の進歩によって、顧客ニーズは多様化しています。
どんなに優れた商品やサービスであっても、ニーズにマッチしていなければ顧客から選んでもらえません。
提案型営業は、多様化するニーズにも対応できるので、顧客に安心感を与えられるでしょう。
無理に売り込まないので信頼されやすくなる
無理に売り込まないので、顧客から信頼されやすくなるのもメリットです。
ニーズにマッチしていない商品やサービスを売り込めば、押し売りする企業というネガティブな印象を与えかねません。
提案型営業は、顧客ニーズを把握したうえで解決策を提案するので、顧客満足度の向上につながります。
顧客と長期的な関係性を構築できる
顧客が求める提案ができれば、長期的な関係性を構築できます。
関係性を構築できれば、継続した受注につながりやすくなるでしょう。
ただし、長期的な関係性を構築するには、定期的なフォローアップも欠かせません。
リピーターを獲得しやすい
そして、リピーターを獲得しやすいといったメリットもあります。
最適な解決策を提案して信頼してもらえれば、また利用したいと思ってもらえるでしょう。
リピーターを獲得できれば、売上の安定化にもつながります。
新規顧客開拓にもつながる
信頼できる企業だと認識してもらえば、既存顧客から新規顧客を紹介してもらえる可能性があります。
企業が成長し続けるために新規顧客を開拓するには、手間とコストがかかります。もし、既存顧客が新規顧客を紹介してくれれば、コスト削減が可能です。
自社を信頼してくれる顧客からの紹介なら、新規顧客との信頼関係も構築しやすいでしょう。
顧客単価の向上を狙える
さらに、顧客単価の向上を狙えるのもメリットです。
顧客と信頼関係を構築できれば、継続的に商品やサービスを利用してもらえる可能性があります。その過程で、関連商品やランクアップに興味を持ってもらえれば、クロスセルやアップセルで、顧客単価の向上が見込めます。
提案型営業のデメリット
提案型営業にはデメリットも存在します。導入に当たっては、デメリットに対する理解も必要です。
- 顧客との関係性を構築するのが難しい
- 成果を出すまでには時間がかかる
- 担当者には専門的な知識が求められる
顧客との関係性を構築するのが難しい
提案型営業は、顧客の課題解決策を提案するのが目的です。
自社商品やサービスが解決策になると判断しても、顧客が受け入れなければ不快感を与える恐れがあります。的外れな提案をすれば、他社への乗り換えを検討されるかもしれません。
顧客との信頼関係を構築するには、顧客の現状や課題を正確に把握する必要があります。
成果を出すまでには時間がかかる
提案型営業では、まず顧客の課題を引き出してから、最適な解決策を導き出します。
その間に、顧客との信頼関係も構築しなければなりません。
そのため、成果を出すまでには時間がかかります。すぐにでも成果を出したい場合は不向きとなるので注意が必要です。
担当者には専門的な知識が求められる
そして、担当者には専門的な知識が求められます。
提案型営業を成功させるには、顧客の課題を正確に把握したうえで、さらに最適な解決策を導き出さなければなりません。
その他の営業手法でも営業担当者には、ヒアリング力やコミュニケーション力が求められますが、提案型営業にはより踏み込んだ専門的な知識が必要です。
新たに提案型営業を導入する場合は、人材育成が必要になることに留意しましょう。
提案型営業に求められるスキル
では次に、提案型営業に求められるスキルを紹介します。
- ヒアリング力
- 仮説思考力・仮説構築力
- プレゼンテーション力
- パートナーシップ力
ヒアリング力
提案型営業は、顧客にとって最適な提案をするために、ヒアリングによって課題を引き出さなければなりません。
もし、顧客自身が課題を把握できていない場合は、ヒアリングで顧客自身が気づいていない潜在的な課題を引き出す必要があります。
営業におけるヒアリングでは、以下の質問方法を用いるのが一般的です。
- クローズドクエスチョン:YESとNOのどちらかを選ぶ
- オープンクエスチョン:自由に回答する
どちらの質問方法が適しているかは、状況によって変わるため使い分けが必要です。
また、ヒアリングでは顧客の話を聞くだけでなく、顧客に寄り添い共感できる「傾聴力」も求められます。
仮説思考力・仮説構築力
まず、顧客の現状から、導き出す解決策が正しいのかを判断しなければなりません。そのためには、仮説立てが必要です。
事前に顧客の情報を収集しても、得られる情報は限られます。限られた情報から最適な提案を導き出すには、仮説思考力が欠かせません。
仮説構築とは、仮説を立て検証することです。仮説はあくまで仮定にすぎないため、最適な提案につなげるためには、仮説構築力が求められます。
プレゼンテーション力
プレゼンテーション力は、提案型営業において無くてはならないスキルです。
大前提として、顧客が提案内容に納得できなければ、成約にはつながりません。
立案した提案が、顧客に与えるメリットやベネフィットを効果的にアピールするには、プレゼンテーション力が必要です。
なお、成功事例を紹介する場合は、具体的な数字を提示すると説得力が増します。具体的に提示できれば、顧客もイメージしやすくなります。
パートナーシップ力
そして、パートナーシップも必要です。
営業におけるパートナーシップとは、社内の関連部署や社外の利害関係者と協働するという意味があります。
提案型営業では、企業と顧客が同じ方向を向いて課題解決に取り組むときに、パートナーシップ力が必要です。
提案型営業の実践手順5ステップ
続いて、提案型営業の実践手順をステップごとに紹介します。
- 顧客情報を収集する
- ヒアリングで顧客の課題を把握する
- 課題を分析し仮説を立てる
- 顧客に解決策を提案する
- クロージングを行う
ステップ1:顧客情報を収集する
まずは、事前準備として顧客情報を収集します。
情報収集の仕方は以下の通りです。
収集方法 | 収集できる情報 |
---|---|
企業のホームページ | 会社情報 事業内容 プレスリリースなど |
求人サイト | 業種や事業規模 |
法人番号公表サイト (法人等が持つ13桁の番号) | 法人番号の指定を受けた年月日 取引先の情報 倒産や破産のリスク 営業リストとしての活用 |
EDINET | 有価証券報告書 半期報告書 四半期報告書 大量保有報告書 臨時報告書 その他の書類種別 |
参照:EDINET
上記は、全て無料で利用できます。
ツールでも企業情報を収集できますが、無料と有料があるので必要に応じて使い分けるといいでしょう。収集した顧客情報を元に、現状や課題を把握します。
なお、提案のタイミングを逃さないためにも、常に情報のアップデートは忘れずに行ってください。
ステップ2:ヒアリングで顧客の課題を把握する
次に、ヒアリングで顧客の現状と、抱えている課題を深く掘り下げます。
ヒアリングは以下の流れで進めます。
- 現状の確認
- 顧客が求める結果の確認
- ホットボタンの確認
- 顧客の課題を明確にする
- 顧客が満足できる条件を確認する
- 満足した場合の購買意思を確認する
ヒアリングには話を聞くだけでなく、顧客との信頼関係を構築する目的もあります。
また、1度のヒアリングでは正確に課題を把握できないことも少なくありません。次につなげるためには、その場で次のアポイントを取ることも大切です。
ステップ3:課題を分析し仮説を立てる
ここまで収集した情報を元に、課題を分析して仮説を立てます。
仮説立てには、フレームワークの「3C」を活用するといいでしょう。
- Customer(市場環境)
- Competitor(競合環境)
- Company(自社環境)
実際に仮説を立てる時は、ヒアリングの内容に加えて、上記のようなクライアントの周囲を取り巻く要素を踏まえて行ってください。
顧客の課題解決に向けて、より具体的な内容把握に努めましょう。
ステップ4:顧客に解決策を提案する
そして、顧客に解決策をプレゼンテーションしましょう。
まず具体的な提案内容を提示してから、次に提案理由を述べ、必要に応じて商品やプランを説明していきます。
プレゼンテーションでは、提案書で内容を可視化するのも有効です。
最後に、質疑応答の時間を設けて顧客の不安や疑問を解消しておくと、顧客との信頼関係を構築しやすくなるでしょう。
ステップ5:クロージングを行う
最後にクロージングを行います。
クロージングは合意と契約を前提にしていますが、契約前にもう一度意思確認をしてください。
もし相手に決裁権がない場合は、決裁権を持つ人からの回答日時と、契約期日の再確認が必要です。
成約の有無に関わらず、クロージング後にはお礼メールによるアフターフォローも欠かせません。
提案型営業を成功させる3つのポイント
では最後に、提案型営業を成功させるポイントを3つ紹介します。
- ウォンツ(Wants)の先にあるニーズを正しく読み取る
- 顧客視点で営業活動を進める
- 顧客の不安や疑問を払拭する
ウォンツ(Wants)の先にあるニーズを正しく読み取る
まず、ウォンツ(Wants)の先にあるニーズを、正しく読み取ってください。
ウォンツには、欲求の意味があります。提案型営業では、顧客ニーズを満たす解決策への欲求のことです。
ウォンツを把握していても、真のニーズを理解できていなければ、本当の意味で最適な提案はできません。
ウォンツの先にあるニーズまで正しく理解できていれば、複数の選択肢があっても最適な提案を見出だせるようになります。
顧客視点で営業活動を進める
そして、顧客視点で営業活動を進めることも大切です。
顧客にとって最適な解決策と判断しても、顧客が提案内容に納得しなければ成約にはつながらないでしょう。
的外れな提案をすれば、顧客からは信頼してもらえません。
常に顧客視点で考えながら、顧客にとって最適な提案ができるように意識してください。
顧客の不安や疑問を払拭する
そもそも、顧客が不安や疑問を抱えたままでは、信頼関係は構築できません。
一方的に提案するのではなく、顧客に寄り添いながら不安や疑問を払拭していってください。
丁寧に寄り添っても、契約にはつながらないこともあるでしょう。契約につながらなくても、この先のリスクや対処法の提案など、アフターフォローは続けてください。
丁寧にアフターフォローを続けていけば、顧客と長期的な関係性を構築できるでしょう。
まとめ:提案型営業を実践して顧客との信頼関係を確立しよう
提案型営業は、顧客の課題に対して最適な解決策を提案する営業手法です。
顧客ニーズを正確に把握できていることが前提ですが、顧客にとって最適な解決策を提案すれば信頼関係を構築しやすくなります。
本記事で紹介した情報を参考にしながら、提案型営業を実施して、顧客と信頼関係を確立して長期的な取引につなげてください。