営業の人材育成ガイド!新人営業マンを育てる計画設計や方法を紹介
現代のビジネス環境は、目まぐるしく変化しています。顧客のニーズは多様化し、競争は激化する一方です。このような状況下で、企業の将来を担う新人営業マンの育成は課題の一つでしょう。
しかし「新人研修の内容が個人の裁量に頼りがちでバラつきが生じる」「個々のニーズに合わせた育成が難しい」と、悩みを抱える担当者は少なくありません。
これらの課題を解決するには、体系的で効果的な営業人材育成プログラムを構築する必要があります。
そこで本記事では、実効性のある人材育成計画の設計と実施方法を具体的に解説します。成果を残せる人材を輩出するための組織体制についても紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
営業人材の育成に関する課題
営業人材育成は、多くの企業が直面する共通の課題であり、困難と感じる企業は少なくありません。
HubSpotが発表した「日本の営業に関する意識・実態調査2023」によると、売り手ビジネスを担う1,545名を調査したところ、48.4%が「人材育成」を課題としていることが分かりました。
営業人材の育成が課題になっている理由には「人員不足」や「営業スキルを習得する支援不足」が挙げられます。
また、企業担当者側のメンタルヘルスも関係しています。体系的な育成プログラムが不足していると、営業スキルを習得しづらく成果につなげられません。
営業の人材育成を成功させるためには、こうした課題の解決が急務といえます。
営業の人材育成が重要視される背景
売り手ビジネスの約半数が営業人材の育成を課題と捉える背景には、現代のビジネス環境が密接に関係しています。
近年、営業を取り巻く環境は大きく変化しており、以下のような課題に対応しなければなりません。
- 市場の成熟でプロダクトが複雑化している
- 顧客の消費行動が多様化している
- メンバー間でのコミュニケーションが希薄化している
市場の成熟でプロダクトが複雑化している
市場が成熟するにつれて、プロダクトの複雑化は多くの業界で顕著なトレンドとなっています。
たとえば、機能の高度化(例:AIアシスタントの登場や通話やカスタマイゼーションの増加)や、技術進化(例:自動運転技術)などが挙げられます。
よって営業担当者は、詳細な製品知識と顧客のニーズを理解する高度なスキルが求められるようになりました。
- 機能性や価格だけでなく、顧客の業務効率化や差別化に貢献するスキル
- 業界や業種ごとに異なるニーズを理解し提案するスキル
- 法規制や技術革新など、常に変化する最新情報を把握するスキル
単に商品を説明するだけでなく、課題を的確に理解し、最適な解決策を提案できる人材を育てる必要があります。
顧客の消費行動が多様化している
近年、消費者の行動様式は大きく変化しており、特に「サービスへの嗜好」の変化が顕著です。その代表的な変化として、消費者は「お気に入りの商品やサービスにこだわる」傾向が強まっています。
この変化の背景には、世帯年収の維持と自粛生活・テレワークによる時間的余裕の出現が挙げられます。
制限された生活の中で楽しみを見出すために、消費者はより質の高い商品やサービスを求めるようになり、結果的に「お気に入りの商品やサービスにこだわる」ようになったと考えられます。
こうした顧客一人ひとりのニーズに対応するためには、営業担当者は柔軟性と顧客理解を深めなければなりません。企業の競争力を維持するには、消費行動に合わせて行動できる人材を育成する必要があります。
メンバー間でのコミュニケーションが希薄化している
メンバー間でのコミュニケーション不足も、人材育成が注目される背景の一つです。
リモートワークやテレワークの導入により、営業担当者同士の直接的なコミュニケーション機会が減少しています。
チームワークや情報共有が難しくなり、個々の営業担当者の裁量権が増す一方で、全体的な戦略や方向性にズレが生じるリスクも高まっています。
これらの変化に対応するためには、従来の画一的な営業研修ではなく、個々のニーズに合わせたきめ細やかな人材育成をしなければなりません。企業は、これらの課題を認識し、積極的に人材育成に取り組む必要があります。
OJTという名の丸投げで営業スキルにばらつきがある
OJTという教育スタイルも、営業の人材育成を課題にした背景でしょう。
従来、多くの企業ではOJT(On-the-Job Training)を中心とした営業人材育成が行われてきました。しかし、OJTは指導者によって教え方が異なり、スキルに大きなばらつきが生じやすいという課題があります。
近年は、営業活動の複雑化が進み、高度な専門知識やスキルが求められるようになっています。組織全体のスキルを均一化するには、体系的に学べる教育環境が不可欠といえるでしょう。
1つの会社に勤め続けるという働き方が減ってきている
終身雇用制度の崩壊やワークライフバランスへの意識の高まりから、1つの会社に勤め続ける働き方が減ってきている状況も、人材育成が注目される要因でしょう。
特に、教育体制が整備されていない環境では、スキルアップが見込めず将来性を見出しづらくなります。そうなると、より良い条件を求めて転職する人が増え、人材の流出が避けられません。
こうした課題を解決するためには、体系的な営業人材育成プログラムを構築し、個々のニーズに合わせた育成をすることが重要です。働き方改革を進め、スキルアップしやすい環境を整える必要もあるでしょう。
営業人材の育成で標準化するメリット
営業人材育成を標準化することで、以下3つのメリットが得られます。
- チーム全体の業績アップにつながる
- モチベーションアップによる離職率の低下が期待できる
- 新規採用後の育成体制を整えられる
チーム全体の業績アップにつながる
営業人材育成の標準化は、チーム全体のスキルを均一に高めることで全体の業績向上に寄与します。
標準化されたトレーニングプログラムにより、全員が高い水準で営業活動できるため、売上の増加が期待できるでしょう。
モチベーションアップによる離職率の低下が期待できる
適切なトレーニングとサポートは、従業員のモチベーションを向上させ、離職防止の要因となります。
人材育成が整備されていると、必要なスキルを身につけられ、仕事にやりがいを感じられるようになります。
また、公平な評価のもとで自己成長を実感できれば、結果的に離職率の低下につながるでしょう。
新規採用後の育成体制を整えられる
新規採用後の育成体制が整備されることも、営業人材の育成プログラムを標準化するメリットです。
新人に対しては、即戦力になるよう効率よく教育しなければなりません。入社後すぐに一貫した教育を施すことで、必要なスキルと知識を効率的に身につけ、早期に成果を出せるようになるでしょう。
また、育成コストの削減にもつながります。育成体制が整備できていれば、個々に適した指導を円滑に進められます。
効率的に営業人材を育成できれば、企業の競争力が一層高まるでしょう。
営業人材の育成方法
営業人材の育成にはさまざまな方法がありますが、特に効果的とされる代表的な3種類を紹介します。
- ロールプレイング
- 複数人体制でのOJT
- OFF-JT
ロールプレイング
まずは、ロールプレイングです。
ロールプレイングとは、実際の状況をシミュレーションするトレーニング手法のこと。営業スタッフがさまざまな顧客の役割を演じることで対応スキルを磨き、異なる売り込みシナリオでの反応や問題解決の方法を実践的に学べます。
特に、対人スキルと製品知識を同時に向上させたい場合に有効でしょう。
ロールプレイングを実施する際は、シナリオ設定をしっかり準備し、実施後のフィードバック体制を整備してください。
また、場数を踏むことで効果を実感できるため、継続的に実施するといいでしょう。
複数人体制でのOJT
複数人体制でのOJTも、有効です。
従来では、OJTは指導者と新人スタッフの1on1が主流でした。しかし、指導者によって教育内容にバラつきが生じるため、最適解とはいえません。
複数人でOJTを実施することで、異なるスタイルやアプローチを観察し学びながら、同時に複数の意見や技術を吸収できます。チーム内の知識共有が促進され、より広い視野と柔軟性を持って対応能力を高められるでしょう。
さらに、複数人でのトレーニングはチームワークを自然に促進します。職場の士気を高めるだけでなく、実際の業務での協調性や助け合いの精神も育まれるでしょう。
OFF-JT
OFF-JTも、営業の人材育成で取り入れるべき手法の一つです。
OFF-JT(Off-the-Job Training)とは、職場外で行われる形式的な研修のこと。専門的なトレーニングセッションやワークショップ、セミナーなどを通じて、営業スタッフが新しい技術や理論を学べます。
この方法では、異なる業界や背景を持つ他の参加者から刺激を受けられるため、視野を広げ、より戦略的なアプローチを習得できるきっかけになるでしょう。
営業の人材育成を成功させる手順
営業人材育成を成功させるためには、体系的なアプローチと継続的な改善が欠かせません。
ここからは、以下5つのステップに沿って具体的な手順を紹介します。
- 必要な人物像から営業計画を策定する
- 営業担当者個々での現状の成果を見える化する
- 理想的な担当者の特徴や成功パターンを言語化する
- 営業プロセスの実施に向けた知識とスキルを洗い出す
- 人材育成プロセスを定期的に見直す
必要な人物像から営業計画を策定する
成功する営業チームを構築するには、何を成し遂げる必要があるのかを理解し、それに適した人物像を定義することが重要です。
具体的には、以下のことを明確にしましょう。
- 会社全体の事業戦略と営業目標
- ターゲット顧客の属性、ニーズ、購買行動
- 上記の分析に基づく目標達成に必要なスキルと経験
これらを考慮に入れ、理想的な営業担当者が持つべき特性や能力を特定し、それをもとに全体の営業計画を策定してください。
営業担当者個々での現状の成果を見える化する
続いて、営業担当者の現状成果を見える化しましょう。
具体的には、以下のことを可視化してください。
- 過去の実績データなどを分析し、成果を定量化する
- 個々の強み・弱みを把握し、課題を特定する
- 営業担当者のスキルや経験、キャリアプランを把握し、個々のニーズを把握する
成果を定量的、定性的に評価し可視化することで、パフォーマンスのバラつきを理解できます。個別の育成プランや目標設定を実施できるようになるでしょう。
理想的な担当者の特徴や成功パターンを言語化する
成功している営業担当者の行動パターンや特性を具体的に言語化し、トレーニングプログラムや評価基準に組み込みます。
具体的には、以下のことを言語化してください。
- 会社のトップセールスパフォーマンスの共通点や成功パターン
- 顧客にとって理想的な営業担当者の特徴
- 成功している企業の営業人材育成方法
この過程で、成功の要因が明確になり、効率よく売上向上を目指せるでしょう。
営業プロセスの実施に向けた知識とスキルを洗い出す
効果的な営業活動をするために必要な知識やスキルを洗い出し、それを基にトレーニングプログラムを設計します。
具体的に、以下の項目を洗い出してください。
- 受注までの具体的な営業プロセスと、各プロセスに必要な知識とスキル
- 顧客ニーズを的確に把握し提案に繋げるコミュニケーションスキル
- 商品・サービスに関する深い知識
- 顧客とwin-winの関係を築ける交渉スキル
- 限られた時間の中で効率的に活動できるタイムマネジメントスキル
上記をもとに、実践的なスキルの習得をトレーニングに組み込みましょう。
人材育成プロセスを定期的に見直す
市場環境の変化や営業戦略のシフトに応じて、人材育成プロセスも適宜更新する必要があります。
業界の最新動向は常に変化し、それに伴い営業活動もアップデートしなければなりません。そのため、定期的にプログラムの効果を評価し、必要に応じてカリキュラムを調整する必要があります。
これにより、育成プロセスが常に最新の業界要求に合致し、営業チームが持続的に成長できる環境を維持できるでしょう。
優秀な営業人材を輩出するためにチーム全体で実施すべきこと
優秀な営業人材を輩出するためには、担当者だけでなくチーム全体で取り組むことが重要です。
そこで、具体的な4つの施策を紹介します。
- 新人がハマりやすい悪習慣を把握する
- 社内コミュニケーションをこまめに取る
- 組織と個人でそれぞれPDCAを回す
- Webツールを導入する
新人がハマりやすい悪習慣を把握する
新人営業員が陥りがちな悪習慣を理解し、それを未然に防ぐ教育を施すことが重要です。
特に、入社後は経験不足や知識不足から、以下のような悪習慣に陥る可能性があるでしょう。
- 過度なプレッシャーから無理な営業目標を設定してしまう
- アポ無しで訪問し断られてしまう
- ニーズを十分に把握できず、適切な提案ができない
- クロージングのタイミングが掴めず、商機を逃してしまう
こうした悪習慣を放置すると、新人の成長を妨げ、離職の原因にもなりかねません。チーム全体で新人が陥りやすい悪習慣を把握し、早めに対策をとりましょう。
社内コミュニケーションをこまめに取る
社内コミュニケーションをこまめに取るようにしてください。
営業チーム内でのコミュニケーション頻度を高めることで、情報の共有がスムーズになり、チーム全体の協調性が向上します。
具体的には、以下のようなコミュニケーションを積極的に取ってみましょう。
- 各自の営業活動の進捗状況や課題などを共有する
- 成功事例やノウハウを共有しチーム全体のスキルアップにつなげる
- 社内SNSを活用してみる
- 困り事があれば、気軽に相談できる環境を作る
定期的なミーティングやカジュアルな情報交換の場を設けることで、メンバー間の信頼関係を深め、チームとしての一体感を育てられます。
特に、社内SNSであれば、メールに比べて気軽な情報交換が可能です。メッセージ機能も豊富なので、ぜひ導入してみてください。
組織と個人でそれぞれPDCAを回す
チーム全体で営業力向上を目指していくには、組織と個人それぞれでPDCAサイクルを回し、継続的に改善することが重要です。
それぞれ実施したいPDCAは、以下のとおりです。
【組織でのPDCA】
目標設定 | チーム全体の営業目標を設定する |
---|---|
現状分析 | チーム全体の営業活動の現状を分析し課題を特定する |
施策立案 | 課題解決のための施策を立案する |
実行・評価 | 施策を実行し効果を評価する |
改善 | 評価結果に基づいて施策を改善する |
【個人でのPDCA】
目標設定 | 個人の営業目標を設定する |
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自己分析 | 自分の強みや弱みを分析し課題を特定する |
スキルアップのための学習 | 課題克服のための学習を行う |
実践 | 学んだことを実践し効果を検証する |
振り返り | 実践結果に基づいて改善策を講じる |
PDCAは、個人で実施するのが一般的ですが、組織レベルで進めることでチームとして目標達成に向けた戦略を調整できるでしょう。
Webツールを導入する
営業活動の効率化や情報共有を促進するために、Webツールの導入が有効です。営業活動に取り入れることで、営業プロセスの効率化と効果の最大化が期待できるでしょう。
具体的には、以下のようなツールが役立ちます。
CRM | 顧客情報や営業活動の履歴を管理するツール |
---|---|
SFA | 営業活動の進捗状況を可視化するツール |
タスク管理 | ToDoリストやスケジュールを管理するツール |
コミュニケーションツール | チャットやビデオ会議、情報交換などの機能を提供するツール |
また、リモートでの営業活動やチームコラボレーションも支援できるため、柔軟な働き方を促進し、生産性の向上に寄与するでしょう。
これらの措置を実施することで、営業チームはより一層の成長を遂げ、優秀な営業人材の輩出が可能になります。
営業人材育成に向けた個々人の成果を見える化するならセールスパフォーマー
営業人材の育成は、情報共有や業務の可視化を効率化するセールスパフォーマーがおすすめです。
本ツールを導入することで、各営業担当者の活動データを詳細に追跡し、成約率や顧客訪問数、受注額などのKPIを一目で確認できるようになります。
こうした情報の可視化により、担当者は即座に効果的なフィードバックを行い、営業戦略の最適化や個々のトレーニングニーズに応じた指導が可能になるでしょう。
また、営業担当者自らもパフォーマンスを客観的に把握し自己改善へつなげられるため、全体のモチベーションアップにも寄与します。
セールスパフォーマーの導入は、営業成績の向上はもちろん、効率的な人材育成を実現するための重要なステップといえるでしょう。
まとめ:営業人材の育成でスキルを標準化して業績アップにつなげよう
営業人材の育成において、スキルの標準化は全体の業績向上へと直結する重要な戦略です。このアプローチにより、新人教育の効率化や持続的な成長と進化が可能になるでしょう。
ただ、育成プログラムを整備する際は、組織全体として持続可能な成長を実現する基盤として構築しなければなりません。これにより、チームは一層結束を強め、共通の目標に向かって進めるようになるでしょう。