コールセンターの通話録音は違法?メリットや開示義務・保存期間など法律も解説
コールセンターで通話を録音するのは、言った言わないのトラブルを回避するだけでなく、コール品質や社内コンプライアンスの向上といった目的があります。
通話録音システムを利用するのが一般的ですが、顧客には事前の通知が必要です。
通話録音にはさまざまなメリットがある一方で、自分の会話が録音されることに抵抗を持たれる顧客もいるでしょう。
そこで本記事では、コールセンターの通話録音に違法があるのかについて解説します。通話録音のメリットや法律も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
コールセンターの通話録音は違法ではない
結論から述べると、コールセンターでの通話録音に違法性はありません。
コールセンターでは、問い合わせの際に顧客自らの意思で、個人情報を開示していると判断できます。
顧客の同意を得ずに録音しても法律上問題はないものの、倫理的観点から事前に告知する必要があります。
なお、録音した内容を改ざんしたり、データを業務利用以外の目的で悪用したりした場合は、もちろん法に触れる可能性があります。録音したデータの取り扱いには十分に注意しなければなりません。
通話録音の盗聴と秘密録音との違い
相手の同意を得ず通話内容を録音すると、盗聴や秘密録音になるのでは?と不安に思う方もいるでしょう。
- 盗聴:第三者が無断で録音すること
- 秘密録音:相手の同意なしで会話を録音すること
盗聴や秘密録音にはこのような定義がありますが、相手の同意なしに録音しても違法にはなりません。
また録音データには、証拠能力があります。
たとえば、顧客から理不尽なクレームがあり、訴訟に発展したような場合は、録音データを証拠として提出できます。
コールセンターで通話を録音する理由とメリット
なぜコールセンターで通話を録音するのか、その理由とメリットについて解説します。
- 応対品質を向上させるため
- 聞き漏らしや聞き違いなどのミスを減らすため
- コンプライアンス意識を向上させるため
- 客観的な証拠を残すため
- クレームの抑制効果が期待できる
応対品質を向上させるため
まず、応対品質を向上させる目的があります。
顧客との通話中は、自分がどのように対応しているのかを客観視できません。
そこで、通話を録音して後から聞き直せば、自分がどのように対応しているかを客観的に判断できます。
また、スキルの高いオペレーターのデータを教育に活用すれば、応対品質の底上げや標準化につながるのもメリットです。
聞き漏らしや聞き違いなどのミスを減らすため
コールセンターの平均入電数は、1日あたり40~60本とされています。
業種や繁忙期や閑散期などの違いはあるものの、多くの電話に対応していると聞き漏らしや聞き違いといったミスが生じることもあります。
もし、聞き漏らしや聞き違いがあっても、後から通話録音を聞き返せば、正確な内容を確認できます。
コンプライアンス意識を向上させるため
通話録音は、オペレーターのコンプライアンス意識を向上させる目的もあります。
コールセンターを設置するのは、顧客満足度の向上も目的の一つです。
もしオペレーターの対応に不備があり、顧客を不快にさせれば、コンプライアンス意識が低い企業というネガティブなイメージを持たれる恐れがあります。一度失った信頼を取り戻すのは、容易ではありません。
オペレーターが通話を録音している意識を持ち対応すれば、コンプライアンスの向上につながります。
客観的な証拠を残すため
コールセンターでは、言った言わないの食い違いが生じることも少なくありません。
そこで、録音した通話内容を確認すれば、客観的な証拠になります。
企業としては、顧客を第一に考えますが、客観的な証拠により双方が納得できればトラブルを回避できるでしょう。
クレームの抑制効果が期待できる
コールセンターで通話を録音する際には、事前に「通話内容を録音します」というアナウンスを流します。
クレームを目的とした電話では、怒りから一方的にまくし立てたり、暴言を吐いたりすることも少なくありません。中には悪質なクレーマーからの理不尽な要求もあります。
そこで、通話を録音するというアナウンスを流すことで、クレーム抑制効果が期待できます。
クレーム対応が減れば、オペレーターの精神的な負担も軽減されるでしょう。
コールセンターで通話を録音する際の注意点
では次に、コールセンターで通話を録音する際の注意点を5つ紹介します。
- 個人情報保護法に基づいた対応が求められる
- 録音データは適切に管理・保存する
- 国によって法律が異なるので注意する
- 顧客から請求があった場合は開示義務がある
- 顧客やオペレーターの心理的負担を考慮する
個人情報保護法に基づいた対応が求められる
通話内容に個人情報が含まれる場合は、個人情報保護法により利用目的を伝える義務があります。
解決策としては、事前のアナウンスで対応が可能です。
アナウンス例文
「この通話は、応対品質向上のため録音させて頂きます。」
「この通話は、お問い合わせ内容の確認のため、お客様との会話を録音いたします。
予めご了承ください。」
参照:個人情報の保護に関する法律
参照:コールセンター業務倫理ガイドライン
このようなアナウンスを流すことで、顧客の警戒心に配慮できます。また、オペレーターが対応する際にも、顧客を不安にさせない配慮が必要です。
録音データは適切に管理・保存する
コールセンターの通話録音に関して、明確なルールはないものの、個人情報保護法では録音データの保存期間は3年と定められています。
通話録音データは、振り返りやオペレーター教育などにも活用できますが、使い終わった後も適切に管理や保管をしてください。
国によって法律が異なるので注意する
録音データの取り扱いに関する法律は、国によって異なります。海外から電話をかけるクライアントの場合は、録音データの取り扱いも変わります。
たとえば、アメリカでは州によって2年~5年と録音データの保存期間が異なるため、日本のように一律ではありません。
ドイツでは、保存期間を原則10年間としていますが、目的に応じて保存期間が短縮または延長されることもあるようです。
顧客から請求があった場合は開示義務がある
顧客から、録音データを聞きたいと請求があった場合には、開示義務があることに留意しましょう。
開示義務については、個人情報保護法や、コールセンター業務倫理ガイドラインでも定められています。
参照:個人情報の保護に関する法律
参照:コールセンター業務倫理ガイドライン
顧客から請求された場合には、速やかに情報を開示してください。
顧客やオペレーターの心理的負担を考慮する
通話録音は、メリットがある一方で、顧客やオペレーターの心理的負担になる可能性があるので注意してください。
事前のアナウンスがあっても、自分の会話が知らないところで利用されることに不安を覚える方もいるでしょう。
また、オペレーターも録音されていることに、プレッシャーを感じる可能性があります。
顧客には利用目的を明確にして、データは業務目的以外では利用しないことを伝えてください。
オペレーターには、管理者が個別面談を行うといった心理的なケアも必要です。
コールセンターの通話録音にはシステムの活用がおすすめ
コールセンターで通話内容を録音するには、通話録音システムを活用しましょう。
自動で録音できる他にも、データの共有がスムーズになります。
システムの機能によっては、応対時間の削減により、オペレーターの業務負担を軽減できる場合もあります。
こちらの記事では、通話録音システムについて詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
通話録音システム15選を徹底比較!コールセンター向けの選び方も紹介
まとめ:コールセンターの通話録音は法令を遵守して有効活用しよう
コールセンターには、問い合わせ以外にもクレームなど、さまざまな内容の電話がかかってきます。
次々と電話に対応しなければならないと、聞き漏らしや聞き間違いといったミスが生じる恐れがあります。
そこで通話内容を録音すれば、言った言わないのミスにも客観的な証拠として活用が可能です。
コンプライアンスの強化やオペレーター教育にも活用できるので、メリットは多いといえるでしょう。
コールセンターの通話録音は、法令を遵守することも大切です。本記事で紹介した情報を参考にしながら、通話録音データを有効活用してください。